マカロニアンモナイト
マカロニアンモナイト月刊特集 写す人 第四回
写真

写真画質はこうして創られる

−フィルムからデジタルまで−(後編)
文/中山慶太
後編目次【8】
2005年10月掲載



§さらなる多様化の時代に向けて§



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『フォルティアSP』で写した河津桜。
(写真提供:富士写真フイルム)

 今回の取材ではカラーネガフィルム中心にお話を伺ったけれど、井駒さんはもちろんリバーサルフィルムやその他の写真システム開発も手がけ、今はそれらを統括する立場にある。だからそのあたりの思い出も汲みだせば尽きない。

「当社のリバーサル製品は市場では後発でした。80年代のことですが、先行するライバルメーカーの製品を凌駕した新製品を開発して、プロ市場に売り込んだわけです。ところがなかなか反応が得られない。職業写真家の現場は既成のブランドへの信頼が厚く、なかなか新しいものを受け入れてくださらないのですね。当時は営業の方も苦労されたと思います」

 そこに信頼を築くきっかけとなったのは、フジフイルムの製品づくりの安定性であるという。

「他社は製造ロット毎にバラツキがあり、乳剤情報を常に公開して色の偏りを補正するよう推奨していました。でも当社のリバーサルはそういう補正がほとんど必要なく、常に安定した性能を出していた。それが評価されて、90年代には大きなシェアを握ることができた。フラッグシップとして開発した『ベルビア』のイメージも成功に大きく貢献しました」

 そのベルビアは井駒さんいわく「採算度外視に近いほど開発や製造にお金をかけた、贅沢なフィルム」なのだそうだ。


 いっぽう映画用フィルムについては、スチール写真とは比較にならないほど手強い分野だという。映画はアメリカで開発され同国の文化の象徴であり、業界をあげて同国の生産品を支えている。特にハリウッドなどでは映画製作=同国文化の発信と概念が固定化しているために売り込みが難しいそうだ。それでも技術面での優秀性が認められ(1982年にはフジの映画用フィルムがアカデミー科学技術賞を受賞している)採用例は着実に増えているという。


フジカラー映画用ネガティブフィルム「ETERNA 250/250D」












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最新のリバーサルフィルム『フォルティアSP』。あのベルビアを超える彩度設計で風景写真家の支持を得た限定品で、もちろん新技術もたっぷり積んでいる。





 井駒さんはこれからのフィルム写真について「写す人にも写される人にも、それぞれの場面で価値がある写真を提案していきたい」と語る。それは「過去の開発競争で、置き忘れてきたものがあった」という言葉に示唆されるように、写真の撮り方、楽しみ方を含めた幅広い提案になるようだ。

「くっきり、キレイに写るだけが写真の価値ではありません。例えばストロボを使わなくても写るフィルムとカメラがあれば、その場の雰囲気が豊かに写し込めます。僕らは『ナチュラ1600』『ナチュラS』というフィルムとカメラで、そういうユーザーの気持ちが写せる写真を提案しました(詳細は、ナチュラブログ参照)。またリバーサルでもこれまでにない彩度を持った『フォルティア』『フォルティアSP』を開発して限定生産しています。フィルム写真にはまだまだいろいろな楽しみ方がありますよ」とのこと。


 世の中には「デジタルとフィルムの二者択一」を迫るような論調の記事が多い。でも僕らはどっちも選べるし、選びたいし、どちらか一方を諦める必要もない。好きなときに好きなカメラで、好きな風景や人を撮る。その時の気分が自然で優しいフィルム写真に合っていたら、迷わずそちらを選べばいい。それは小さな贅沢だろうか?

 いや、その先には豊かな写真表現の世界が待っているのだ。


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光と影で「写す気持ち」を描く。だからフィルム写真は面白い。(撮影:中山慶太)






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マカロニアンモナイト月刊特集「写す人第四回 写真画質はこうして創られる」
後編目次【8】
2005年10月掲載
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