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webマガジン「マカロニアンモナイト」特集
マカロニアンモナイト
築地場外・写真散策
〜フォトジェニックな市場を歩く〜


写真・文/中山慶太

【目次】|【1】|2345 2008年5月掲載
1.旧き良き下町を歩く


午前7時、鳥の目で眺めた築地場外。手前の小さな社殿が波除稲荷神社で、そこから画面奥に向かって伸びる通りが波除通り。商店街は画面右上に広がっている。



 近ごろ築地が話題らしい。雑誌やニュースでも頻繁に採り上げられるし、朝のドラマの舞台にもなっている。活気ある市場の風景がいろんなひとに元気を与えるためだろうか。そう思っていたら、今度は築地が舞台の映画ができるという。2008年6月封切りの「築地魚河岸三代目」がそれである。

 試写会で観た映画は、下町人情ドラマを得意とする松竹らしく、原作のコミックとはひと味違う作品に仕上がっていた。新旧の芸達者を揃えた俳優陣も魅力を発揮しており、また薄暗く込み入った市場内の描写は見ごたえじゅうぶん。邦画の健在ぶりを認識させる快作で、続編にも期待したい。



トラッド&コンパクトな社殿が印象的な波除稲荷神社。建築様式は拝殿の破風が上部に露出した新明(しんめい)造りで、都内の神社では珍しいスタイルだ。築地場外エリアには旧い建物もまだ多く遺っている。



 さて、前回の築地特集から半年、二度目の取材となる今回は築地中央市場を取り巻くエリアを採り上げることになった。

 前回の取材で紹介した「場内」は、近年に一般客にも門戸を開いたとはいえ、基本はやはり「プロの、プロによる、プロのための」市場だった。早朝の場内は販売と物流が入り乱れ、まるで戦場のような様相を呈するから、買い物がてらの写真撮影も遠慮しながら、ということになる。でも今回の取材はアマチュアにも敷居が低そうな「場外」である。フォトジェニックな被写体には事欠かないので、気軽な写真散歩にも最適な場所といえる。


波除通りの商店街。緊張感漂う場内とは好対照の、アジア的にのどかな日だまりが心地良い。



 散歩は午前中の、なるべく早い時間をお勧めしたい。午後にはシャッターを下ろしてしまうお店が多いからだ。今回のスタート地点は中央市場の海幸橋門(かいこうばしもん)。ここから晴海通り方面に三十歩ほど歩くと、右側に小さな社(やしろ)がある。映画にも登場する波除(なみよけ)稲荷神社だ。

 境内も社殿もとてもコンパクトなので、車道を行き交うターレに目を奪われていると、思わず見過ごしてしまいそうなこの神社、実はこのエリアでもっとも長い歴史を刻む名所であり、ここに立ち寄る外国人観光客も多い。その起源は万治二年(1659年)まで遡るそうで、つまり来年には創建350周年を迎える。築地市場ではそれを記念したお祭りも企画されているらしい。

 狭い境内で写真を撮っていると、市場関係者がひっきりなしに訪れ、拝殿に柏手(かしわで)を打っている。柏手を打つ時間がないひとでも、鳥居の下で立ち止まって両手を揃え、深く腰を折る礼を欠かさない。この神社、ひょっとして拝まれる回数は全国でトップクラスじゃないだろうか。

 築地の厄除けは商売繁盛に、ひいては大漁祈願にも通じ、それはこの土地が海を埋め立てて生まれ、海からの恵みをあつかうことにつながるのだろう。



映画でも重要な役所を与えられたターレ。ご覧のように公道を走ることができる。



 神社の鳥居から真っ直ぐに伸びる通りは「波除通り」。この通りと交差していた運河(築地川の支流)は、もう何年も前に埋め立てられて跡形もないが、旧い建物はまだまだ遺っている。なかには昭和初期とおぼしき建築もあり、これはこのエリアが戦災を逃れた(米軍が聖路加国際病院の爆撃を避けたため、という都市伝説もある)ためである。この通りとその右側の区画が「場外」と呼ばれる商店街だ。

 歩き出してすぐに実感するのが、「場内」との違い。荷物を載せたターレはこちらでも目に付くけれど、「荷物優先」の緊張感はあちらほど強くない。居並ぶ店舗の雰囲気もずっとゆったりしており、とはいっても相当に忙しそうではあるけれど、その中にどこかアジア的におおらかな空気が漂う。

 この違いはどこから来るのだろう。立ち寄ったいくつかのお店でお話を伺うと、それは「場外」の成り立ちとも深く関係しているという。



場外エリアのもうひとつの顔、築地本願寺。素晴らしい建築や宗教行事など見所が多く、散策時にはぜひ立ち寄りたい(探訪記は巻末に)。



取材協力:築地食のまちづくり協議会/本願寺築地別院(築地本願寺)





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マカロニアンモナイト特集「築地場外・写真散策」
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