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webマガジン「マカロニアンモナイト」特集
マカロニアンモナイト
デジタルカメラで衛星の撮影にも挑戦!
国際宇宙ステーションを見てみよう

文/松浦晋也 

【目次】1|【】|34 2009年2月掲載
2.国際宇宙ステーション(ISS)
  観察の準備
いつどの方向に現れるかスペース・デブリの把握と回避ISSは時々軌道を変える



スペースシャトル「エンデバー」から撮影された、雲を背景にした国際宇宙ステーション。2008年11月28日撮影。(Photo by NASA)



ISS観察の準備


 では、ISSを見る方法を具体的に説明していこう。

 まず、「いつ、空のどちらの方向に、ISSが現れるか」を知る必要がある。

 日本モジュール「きぼう」の開発と運用を行っている、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のホームページに、<国際宇宙ステーションを見よう>というページがある。ここでISSをいつどこで見られるかを調べることができる。地図上に日本の代表的な都市が表示されているので、それをクリックすると、何月何日の何時頃、空のどちらの方向に、どの程度の時間、ISSが通過する姿を見られるのかを表示してくれる。


 自分のいる場所が、地図に表示された都市ではない場合、<観測地の選択 - ISSを見よう>ページで、自分の居場所の緯度と経度を入力すれば、正確な予報を知ることができる。
 自分の居場所の緯度・経度は、Geocoding で簡単に調べられる。これはGoogleが提供しているサービスで、例えば、東京タワーを住所(東京都港区芝公園4-2-8)で検索すると、「緯度 35度39分31.082秒(35.658634), 経度 139度44分43.48秒(139.745411)」というように、詳細な緯度・経度を教えてくれる。

 JAXAのページの入力に必要なのは、小数点表記の「35.658634、139.745411」という数字だ。もっとも小数点以下6桁というような正確な数字は不要である。小数点以下2桁あれば、十分満足できる予報を得ることができる。

 注意すべきは、ISSは時折軌道を変えており、それに従って予報も変化するということだ。ISSが飛ぶ高度350km付近はごく薄いながら空気が存在し、空気抵抗を受けたISSは徐々に高度を下げていく。このため、時折小さなロケットエンジンを噴射して軌道を持ち上げている。




国際宇宙ステーションと欧州貨物輸送船「ATV」の現在位置と飛行コースを表示する、ミッションコントロールセンター(ジョンソン宇宙センター)のスクリーン画面。2008年3月19日撮影。(Photo by NASA)



 また、軌道上には不要になった衛星やロケットの最終段*、さらにはそれらが壊れることでまき散らされた人工的なゴミ──スペース・デブリという──が多数存在している。それらは小さくとも、ISSに対して秒速数km以上の相対速度を持つ。万が一にでもISSにぶつかったら大きな事故になってしまう。
 スペース・デブリの把握と監視は、アメリカとカナダが共同で運用している北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)が専用のレーダーで行っている。昨今は、クリスマス・イブに「上空を通過するサンタクロースを追跡監視する」というネット上のイベントを行うことで有名な組織だ。
 ISSと衝突する可能性のあるデブリが見つかると、すぐにISS運用の中心である米航空宇宙局(NASA)のジョンソン宇宙センターに通報され、ISSはロケットエンジンを噴射して軌道を修正、デブリを回避する。

 それやこれやで、ISSは時々軌道を変える。軌道が変わると当然の事ながら、予報は変化する。軌道修正はほとんどの場合、予告なしに実施される。ただし、軌道変更はすぐにJAXAのページの予報に反映される。
 だから予報ページはなるべくこまめにチェックすることが必要なのだ。また、観察に出かける直前に、最後のチェックを必ず行うようにしよう。
 もしも、JAXAページへの予報の反映が遅れていたとしても、あわてることはない。軌道を大幅に修正することはめったにないので、通常は予報に数分程度の誤差が出る程度だ。予報通りに空にISSが現れなくても、諦めずに10分程度は観察を続けてみよう。

 ISSは専門的にいうと、軌道傾斜角51.6°の地球低軌道を回っている。軌道傾斜角というのは、軌道が赤道に対して傾いている角度のことを指す。
 ISSは地表との距離は約350km。東京・名古屋間程度だから、直径30cmの地球儀だったら、地球儀の表面から1cmぐらいのところを飛んでいることになる。




国際宇宙ステーションから撮影された地平線。2008年9月13日撮影。(Photo by NASA)



 その軌道をISSはだいたい1時間半で一周する。その間に地球も回っている。地球は24時間で360°回る。1時間あたり15°だ。このため、ISS直下の地上は一周ごとにずれていくことになる。ISSの周期がぴったり1時間半ならば24時間後には地球を16周して元の位置の上空に戻ってくるが、実際には少し異なる。しかも地球が完全な球ではない影響やISSにかかる空気抵抗、さらには先に述べたロケット噴射による軌道修正などが重なるのでぴったりにはならない。

 ちなみに、軌道傾斜角が51.6°ということは、北緯51.6°から南緯51.5°の上空を飛ぶということを意味する。
 実はISSが計画された当初、軌道傾斜角は28.5°を予定していた。この角度はスペースシャトルの打ち上げ基地があるフロリダ州ケネディ宇宙センターの緯度と等しい。軌道傾斜角28.5°の軌道には、ケネディからもっとも沢山の荷物を打ち上げることができるのだ。もしもISSが当初の予定通り28.5°の軌道に建設されていたら、ISSは北緯28.5°までの上空しか飛ばないはずだった。



フロリダ州にあるケネディ宇宙センター。2008年9月20日撮影。(Photo by NASA)



 日本は、沖縄から北海道まで、だいたい北緯24°から43°にかけて広がっている。だから当初の予定通りならば、ISSは沖縄の一部でしか見ることができなかったろう。
 軌道傾斜角が28.5°から51.6°に変わった理由の奥には、ISS計画がたどってきたとてつもない苦難の歴史が隠されているのだが、それについては次ページで語ることにする。

 ISS撮影の好機は、だいたい一週間から10日に1〜2回、それも連日で訪れる。「さあ、見てみよう」と思い立ってから数日間は準備の時間があると思う。

 その間に、ISSについて勉強してみるのも悪くはないのではないだろうか。



 日本モジュール「きぼう」の中核である「船内実験室」が取り付けられた国際宇宙ステーション。2008年6月撮影。(Photo by NASA) 
写真下側の、ハンマーの頭のような部分の右側が「きぼう」、左側が欧州の実験モジュール「コロンバス」。計画開始当初、「きぼう」と「コロンバス」は同じ大きさだった。しかし欧州は、1991年にモジュールの規模をほぼ半分に縮小した。欧州内部で計画を主導しているドイツが1990年の東西ドイツ統一の結果、深刻な財政難に陥ったためだった。

関連リンク→JAXAサイトISS関連用語集:コロンバスきぼう






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マカロニアンモナイト特集「国際宇宙ステーションを見てみよう」
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