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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




131 前代未聞?の大河マンガ

 毎朝、目が覚めるのを合図に、スイッチが入る。
 その途端、それまでからからに乾ききっていた洞窟の奥の泉に、やや粘度の高い水がじわっと浸みだしてくる。洞窟の壁には糸ミミズ状の小さな細長い生物が無数に棲息していて、浸みだしてきた水にたちまち反応し、むずむずと活発に動き出す。その動きが、井戸に連なる洞窟の内壁を激しく刺激する。その刺激を受け、洞窟の内壁からも、水がじゅぶじゅぶと溢れ出し、さして広くもない洞窟内を一挙に満たしてしまう。

 以上のことが、ほぼ一瞬で行われてしまうために、僕は為すすべもない。実際には、目が覚めたことを自覚した時点で、すでにそういう状態なのである。

 そこで、もう一度スイッチが入る。
 洞窟の奥で爆発のようなものが起こり、その爆風で、粘度の高いねばねばした水が、一挙に洞窟の外部へ飛び出す。だが、僕は水と一緒に洞窟から出ることは出来ない。壁の糸ミミズ状の生物にがっちり手足を拘束されていて、どんな強烈な爆発が起こっても、必ず洞窟の内側に引き戻されてしまうのだ。

 爆発の後には、洪水が始まる。
 大量の水が僕を襲い、少々汲み出したところで、水はいっこうに減らない。いったいこんな水がどこにストックされているのかと思うほどの量が、際限なく湧き出し、洞窟内を絶えず埋め尽くそうとする。当然ながら、水で埋まった洞窟内は、まったく空気を通さなくなる。その上、得体の知れない気味の悪い糸ミミズ状の生命体が、常に僕の体を舐め尽くすようにへばりついて放さない。その間にも、爆発が頻繁に起こり、僕はそのたびに体力を大きく消耗していく。

 僕は花粉症である。
 いくらマンガには、ありとあらゆるジャンルが存在するというものの、まさか花粉症をメインモチーフにした大河マンガが生まれることはあるまい。しかし、花粉症を比喩的に書けば、上のような心象風景がマンガで描けなくもない。だから、何なんだという気はするが。


2002年04月17日掲載

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