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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




141 独りの時間

 パソコンを始めた動機の半分がMIDI音楽ならば、もう半分は、パソコン通信なるものをやってみよう、というものだった。まだPentiumも、G4はおろかPowerPCもなかった頃である。
 お気づきの通り、いずれの動機も、独り遊びを基調とするものだ。

 20年も昔の話だが、ある著名な女性が末期癌に冒され、余命あと1年といった宣告を医者から受けた。その時彼女は、誰でもするように、自分に残された時間を計算し、それまで多くの友人知人に囲まれていた状況を一変し、可能な限り交友関係を絶って、なるべく独りの時間を作るようにしたという。彼女にはやるべきことがあり、そのための時間を友人知人と一緒に過ごすことで浪費するわけにいかなかったからだ。彼女が何をする人だったか、確かな記憶がないが、もしかしたら、モノを書くことを生業とする女性だったかもしれない。

 モノを書く、モノを創るというのは、よく言われるように孤独な作業であり、しばしば他人との甘い時間を排する必要がある。もっとも、モーツァルトもガーシュインも、パーティのような、人が大勢雑談する中で作曲することを好んだそうであるが、それは即興演奏というカテゴリーを持つ、音楽ならではの特質のせいもあるかもしれない。小説やマンガでは、なかなか同じようにはいくまい。
 幸か不幸か、僕は以前書いた通り、元々あまり友人を必要としない体質なせいか、普段は売るほど独りの時間がある。あまりに独りの時間が多すぎて、たまの人恋しさに、パソ通など始めようと思ったわけだが、しかし、それでも仕事が重なってくると、他人との交流どころではなくなる。もっともっと、更にいくらでも独りの時間が必要になってくるのである。


2002年07月03日掲載

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