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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




144 アンチ・マシンな僕

 フランス人編集者が、こう説明してくれた。
「日本のマンガ家は、人間じゃなくて、マシン」

 なるほど、そういうことであったか。
 要するに、日本のマンガ家の制作ペースやそのスピードは、到底我々ヨーロッパ人からすると人間業とは思えず、驚くべきマシンのそれである、ということらしい。いや、そのことなら、日本人の僕でもそう思う。
 ところが、僕のゆっくりした制作ペースについては、同行の編集者から前もって聞いていたのだろう。彼が僕について、「福山庸治は、あなたの国のマンガ家と同じように、何かにかこつけては休んでばかりいる、我々日本人からすると、ちっとも仕事をしない、非常に怠け者のマンガ家です」と、事実そのままのコメントをしたかどうかは知らないが、彼らにしてみると、僕が日本人らしからぬアンチ・マシンなマンガ家ということで、ある種の安堵と仲間意識を持ったのかもしれない。それが、ワーカホリックな日本人へ、やや皮肉を込めたような「やっと(マシンではない、生身の)人間に会えた」という言葉になったのだろう。僕自身は多作する能力もなく、単に仕事の依頼が滅多にないゆえの「アンチ・マシン」だったりするのだが、そうしたこれまでネガティヴに捉えられてきて、劣等感コンプレックスにもなっていた部分を、“先進文化国”の人々に、逆に肯定してもらったようで、悪い気持ちはしない。

 もちろん、僕が「アンチ・マシン」なのは、上記の理由だけではない。
 人生には、マンガを描く以外にも、作る(創る)ことの楽しみが、いくらでもあるからだ。独りの時間が、いくらあっても足りないのは、そのせいでもある。


2002年07月24日掲載

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