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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




151 料理で気分転換(2)

 外出するのも、良い気分転換法である。

 が、それだと、気分が変わりすぎて、僕の場合、そのまま仕事を忘れてしまう可能性が高い。僕は仕事場という独房にいるのである。しかも、自分の意志で。扉はいつでも開いている。「締切」という同じ苗字を持った看守が何人かいるが、彼らはホログラムのような虚ろな存在でしかなく、扉の向こうに仁王のように立ちはだかっているわけではない。ただでさえ、僕は脱獄への誘惑に駆られやすい状態にあり、それが可能なポジションにいるのだ。

 そこへ、朝起きたら、よりによって、ピクニックに打ってつけの陽気だとする。まさに猫にマタタビ、豚にトリュフ、サンタに煙突である。

「こんな日に、僕はなんで家なんかに暗く閉じこもって、大して読まれもしないマンガをシコシコ描いているんだろう? 今日という日は今しかない、マンガは今日でなくとも描けるが、この陽気は今日この時間限りのものだ、一度きりの人生をもっと楽しむべきではないか?
 いや、絶対そうだ、こんな日に仕事をしようとする僕は間違っている、ええい、仕事が何だ! ……いや、仕事は大事だ、それは分かっている、しかし、今はもっと大事なことがあるような気がする、そうだ、このままどこかへドライヴに行こう、温泉がいい、温泉へ行って、ヤマメを釣るのだ、いや、たぶん釣れないけど、釣るまねごとだけでもいいのだ、それで僕は満たされるのだ」

 という結論を出すのは、いとも簡単である。
 しかし、僕は、自分が締切を守ってナンボの労働者であることも忘れない。原稿を渡して初めて娑婆へ出られることもよく知っている。気分転換は、せいぜい料理くらいにとどめるべきが無難であろうという経験値もある。でないと、せっかく仕事モードに入っていても、また最初から“儀式”をやり直さなければならなくなる。


2002年09月18日掲載

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