* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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156 読書ができない“病気”

 新聞購読はやめてしまったが、ニュースには絶えず接している。
 ところが、本に関しては、近年めっきり読む機会が減ってしまった。
 とりわけ、小説に関しては壊滅状態だ。

 元々、本を読むのが得意ではない。
 読むのが遅く、読了するのに恐ろしく時間が掛かってしまうからだが、遅い原因はいろいろある。
 たとえば、本を読み始めたとする。何かしら気になる言葉や概念、それにちょっとしたアイディアやシチュエーションなどに出くわすと、僕はそこでたちまちインスパイアされてしまい、先を読み進めるより、自分の“物語”を考え始めてしまうのだ。その場合、本が面白い面白くないは、ほとんど関係ない。どんなでたらめでお粗末な内容であっても、そういった刺激さえあれば、僕は反応してしまうのである。

 一旦そうなると、目の前の活字が、僕にはただのぼやけたインクの染みとしてしか映らなくなってしまう。格好だけは一心不乱に本を読んでいるふうだが、心はここにあらず、同じ行を延々リピートするばかりで、一向に先へ進まない。本を開くたびに、そういうことを繰り返すので、読書は遅々として進まず、読了するのにものすごい時間が掛かってしまうのである。

 これは、一種の職業病かもしれない。
 締切を前に、絶えずアイディアやストーリーを捻り出す作業を長年やってきたせいか、ほんのちょっとでも刺激が加わると、アイディア捻出強迫観念モードが起動してしまうのであろう。昔から脱線夢想傾向があったとはいえ、まだマンガ家としてのキャリアが浅い頃は、この“病気”も今ほどひどくはなかったような記憶があるから、やはりキャリアに比例して、どんどん重くなっているのかもしれない。僕はマンガ家をやめるつもりはないから、これは不治の病とも言える。

 この病の問題は、単に本を読みにくくしているだけではない。そういうふうに、読書を犠牲にしてまで生み出そうとした僕の“物語”が、仕事に直接役に立ったことがほとんどないのである。


2002年10月30日掲載

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