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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




161 36年目の卒業式 〜ビートルズと僕〜(1)

 この連載で、たびたび昔の話を書いているが、僕は実はあまり昔話をしない人間だ。もちろん、訊かれれば話すが、自分から進んで話すことは滅多にない。
 簡単に言えば、過ぎ去ってしまったこと、つまり、既知のこと、終わってしまったことに、ほとんど興味がないのである。あるいは、いつもこれから先のことばかり考えているから、後ろを振り返っている余裕がないといったほうが正しいかもしれない。未知への好奇心は、自分でも強いほうだと思う。それに、新しモノ好きだ。その意味では、とても前向きのようであるが、必ずしも、通常言われるような“前向き人間”というわけでもない。

 たとえば、昔、お金が無くて買えなかったLPレコードを、後に買い求めるということなどほとんどない。買えなくても、友人から借りたり、エアチェックなどで、十分聴き込んでいたりするからで、それくらいなら、名前も聞いたことのないようなアーティストのLPを買ったものだ。

 あのビートルズについてさえ、そうである。
 ビートルズが日本のポップシーンに登場したのは、僕が中学一年生の時だった。僕は同世代の誰よりも早くビートルズを“発見”し、動く姿をTVニュースに追い求め、彼らの主演映画「ヤア! ヤア! ヤア!」を、封切りの日に、初回上映から最終回まで一日中観つづけたり(*)、コピーバンドを作るなど、他の誰よりものめり込んだものだが、今は一枚のCDも持っていない。もちろん、今なお聴けば素晴らしいし、ほとんどのナンバーをそらで歌える。

 しかし、あくまで過去は過去、ある意味で、僕はビートルズを卒業したのである。


(※)田舎の映画館ゆえ、封切館とはいえ、入れ替え無しの三本立てで、「ヤア! ヤア! ヤア!」を3回観るためには、他の二本も2回以上観なければならなかった。ちなみに、他の二本は、ビートルズを含む当時の英国アイドルグループの16mmデモフィルムを集めた「ポップ・ギア」という、急遽とってつけたような映画と、歌手のジェームス・ダーレンやナンシー・シナトラなどが出演する、いわばプレスリー映画ふうの退屈なサーフィン・ラヴコメ映画であった。


2002年12月04日掲載

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