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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




165 36年目の卒業式 〜ビートルズと僕〜(5)

 残り券に福があることは滅多にない。
 あまり良い席でないだろうと予想はしていたが、案の定、僕らの指定席は、ステージの左斜め後方、外野席一番上のどん詰まりの位置にあった。しかも、席の後ろの通路は、スポット照明の基地になっていて、通行が禁止されている。そのため、僕らの膝と前席との10cmにも満たない隙間が通路にされていて、ひっきりなしに客が行き来する。その度に、僕らは中腰になり、脚をすぼめ、道を空ける。
 最初は寛容に道を空け続けていたが、ステージが始まってなお、通行人が視界を遮り、中腰を強いるので、とうとう我慢も限界を超え、近くにいた係員に「ここを通らせるな、ここは通路ではない」と強い口調で苦情を訴えると、なんとか不当な通行は収まった。

 そんな不運はあったものの、とにかく30数年ぶりの「卒業式」には出席出来たのだ。もちろん、この日集まった観客によっては「入学式」の人もいるだろうし、「始業式」の人もいるだろう。子供や若い人、あるいは、同時代でありながらビートルズを体験しなかった人の中には、この日からビートルズが始まる人が沢山いたはずである。同行したつれあいにとってのビートルズは、物心ついた時には既に有名な、教科書にも楽譜が載っている、ポップス史の中の一アーティストに過ぎないので、そのいずれの「式」も当てはまらず、そういう人もまた多いに違いない。だが、何度も書くように、僕がそこにいる理由は、明らかに「卒業式」に出席するためであった。


2003年01月08日掲載

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