* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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175 ネギの無い食卓なんて…

 僕は一昨年の暮れに、今の家に移り住んだ。
 それまで住んでいたアパートを後にする時、一番最後に行った作業は、庭で育てた細ネギとニラを掘り返し、ポリ袋に包んで、引っ越しの段ボール箱で埋まった車の荷台の、僅かな隙間に放り込むことだった。そして、引っ越し後、段ボール箱を開ける前に手掛けた作業は、それらの細ネギやニラを、新しい庭の隅っこに植え込むことだった。

 僕が絶対切らしたくない食材の筆頭は、なんといってもネギである。
 タマネギではなく和ネギ、しかも、鍋などで煮て食べるネギというより、あくまで薬味としてのネギである。薬味だから、量はさほど必要ない。蕎麦でもうどんでも納豆でも、ほんのちょっとあればいい。セロリのように、マヨネーズをつけてバリバリ食べるわけではないのだから。

 僕は、ネギがないと「暴れる」とまで公言している。
 蕎麦もうどんもラーメンも、湯豆腐も冷や奴も納豆も、カツオもアジのたたきも、そのほんのちょっとのネギが無いだけで、僕にとってはまったく別の、間の抜けた食べ物になってしまう。画竜点睛を欠く、という感じか。それほど、薬味としてのネギの存在は大きい。

 だが、その“ほんのちょっと”を切らしてしまう時がある。
 いや、あった。
 だが、今はない。過去形だ。庭に出れば、いつでもネギがある。もちろん、無農薬だ。せめてネギだけは一年中切らすまい、そういう暮らしを目論んで、種を蒔き、育てた。二年目から食べられるようになり、今年四年目に突入。雪や寒風に身を縮ませながらも、一瞬たりとも、青々とした姿を絶やしたことがない。


2003年03月19日掲載

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