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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




177 懐かしの木っ端ガレイ

 僕がまだビールの味を知らなかった頃には普通にあった食べ物で、現在ではあまり食べられなくなったものがある。

 寒い時期だったと思う。
 木っ端ガレイとでも呼んだらいいのか、子供の掌サイズくらいのカレイが魚屋で安く売っていた。その小さなカレイを、軒下のそれ専用にこしらえた板釘に刺してぶら下げ、天日干しにする。程良く乾いたものを七輪の火であぶり、熱いところを直接指でほぐしながら頬ばるのだが、それをご飯のおかずにしたという記憶があまりないので、おやつのように食べていたに違いない。カレイの薄皮がシャリッと焼けて香ばしく、当時好き嫌いが激しかった僕の、数少ない好物の一つだった。

 もちろんカレイだから、味は大きなカレイの干物の味とさして変わらない。ただ幼魚である分だけ、脂っぽさや生臭さが少なく、淡泊で食べやすい。マトンとラムの違いのようなものかもしれない。しかも、柄が小さいので、身は大して無い。どちらかというと皮ばかりが目立つ。ところが、この掌カレイは、そのシャリッと焼けた薄皮こそが美味いのだ。淡泊な白身部分も美味いが、どちらかというとオマケみたいなところがあった。

 その味が懐かしく、いまそうした小さなカレイを買い求めようと思ってスーパーなどを覗いても、ほとんど見かけることはない。獲ってはいけないサイズなのか、利益が出ないから流通していないのか、理由は僕にはわからない。


2003年04月02日掲載

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