写真
---> 拡大表示



* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




184 タイの頭で潮汁

 釣りが好きだったとはいうものの、面白いように釣れた思い出は少なくて、ほとんどは、あまりよく釣れなかったほうの記憶が占めている。船酔いで、釣りどころではなくなることもたびたびあった。要するに、下手っぴな釣り人なのである。

 そんな下手っぴでも、釣り船に乗れば、何かしら釣らせてもらえる。
 冬の荒れた外房で、鮮やかなピンク色をしたマダイが釣れたときは嬉しかった。マダイは、鈎がかかると、逃げようと海の底へぐんぐん突っ込んでいくので、竿が大きくしなり、とても釣り味が良い。釣り味も良いが、味も淡泊で良い。中くらいの大きさのタイが釣れたら、三枚に下ろし、半身を刺身に、もう半身でタイ飯を炊き、頭を潮汁にする。

 今は釣りをしないから、タイの頭を手に入れようと思ったら、スーパーで買うしかない。それも、およそピンクとはほど遠い、どす黒い色をした養殖ものだ。だが、値段は安い。しかも、頭などの周辺モノは、閉店間際でなくとも、わりと半額になりやすい。刺身のほうは高いので、なかなか手が出ないが、頭やアラなどの出物があると、僕はつい手を出してしまう。ビンボーマンガ家生活が長かったせいで、半額のステッカーにはビビッドに反応してしまうのである。ほとんど条件反射化してしまっているといっていい。

 だが、その味は決してビンボーなものではない。
 すっきりとした淡泊さの中に、実に奥の深いコクがある。
 しかも、タイの潮汁ほど簡単な料理はない。
 具がそのまま出汁なので、どう作っても美味しく出来てしまうのだ。

   ……と感じるのは、僕がビンボー舌のせいかもしれないが。


2003年05月28日掲載

<--Back     Next-->



Webmaster :
ammo@tokyo.fujifilm.co.jp
Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部