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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




191 写真にはまっていた日々

 20歳当時の僕にとって、どうして最初に買うべきものがカメラだったのか、今となってはまったく思い出せない。僕は別にカメラマンになるつもりなど、まったくなかったし、なれるとも考えていなかった。マンガ家にはいずれなれると、根拠なく思っていたし、どちらかというと、ただ夢想的にミュージシャンになりたいと思っていたが、カメラマンという自画像は、僕の未来絵図の中には一度も登場したことがないのだ。

 なのに、デビュー作で稼いだ原稿料の大半をつぎ込み、高級一眼レフカメラを買った。カメラ本体だけではない。次の作品の原稿料では、28mmと135mmの交換レンズ二本を同時に買った。カメラ本体よりも高かった。おかげで、レンズを手にした翌日には、友人から生活費を借りる羽目に陥った。カメラ自身も幾度となく質草として活躍した。それでも僕は、どんどん写真関係につぎ込んでいった。次の原稿料が入ると、フィルムの現像タンクやら引き伸ばし機を買い、部屋を暗室化した。部屋は、酢酸の臭いで充満した。結婚後、家を建てようと思って実現しなかったことがあるが、その家の設計図には専用の暗室が備わっていた。

 そこまでのめり込んでいるにもかかわらず、僕の未来計画表に、カメラマンという一行が浮かび上がることはまったくなかった。なりたいのはミュージシャンで、実際なれるのはマンガ家という意識は、岩のような頑固さで僕の意識を支配していた。


2003年07月23日掲載

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