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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




194 軒先の住人(3)

 ツバメが我が生活圏に巣を作り始めたときは困ったことになったと思ったが、いざ雛が孵ると、日々の暮らしの中に、彼らをウォッチングする楽しみが加わった。

 今の町に引っ越してきてから、つれあいが休みの日と非常勤講師の日を除いて、僕は日中を独りで過ごしている。フィットネスへ行くか、誰かが訪ねて来ない限り、まず人と話をすることもない。日中の僕の舌と口は、飲み食いする以外にはほとんど使われていない状態だ。
 さりとて、僕は寂しいと感じたことはほとんどない。
 もともとマンガを描くという行為自体が、そうした一見孤独な環境を必要とするものだが、若い頃は「こうして毎日毎日、誰とも会わない生活をしてていいのだろうか?」と、社会から取り残されたような焦燥感に襲われたりもしたものだ。しかし、今はむしろ、誰にも邪魔されることのない、日中独りであることに、限りない自由を感じている。昔は売るほどあったように思えた独りの時間も、今では足りなくて、もっといくらでも欲しいくらいだ。

 そこへ、ツバメがやってきた。
 いきなり同じ屋根の下に住む者同士になったわけだが、彼らはこちらの生活には決して介入してこないので、他者がそこにいるという感覚はない。気が向けば、こちらが一方的にウォッチングしたり写真を撮らせてもらうだけの関係だ。そういう“同居生活”が七週間続いたせいか、彼らが巣を去ったことを知ったとき、少なからぬ寂しさを感じてしまった。まさに“空の巣”症候群的寂しさなのかもしれないが、鳥の声を聞くと、思わず巣を覗きに行こうとする自分がいて、その寂しさは、まだ今も少しだけ引きずっているようだ。


☆ ☆ ☆


 ※編集部より:
  福山庸治さんの「週休六日のススメ」は、
  次週よりリフレッシュ休暇をとらせていただきます。
  10月 8日(水)更新より再開いたしますのでお楽しみに!


2003年08月13日掲載

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