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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




199 温泉は寂しい(1)

 日本人は、つくづく風呂好きだと思う。

 我が家から車で2、3分のところに、大きな銭湯が出来たので、先日行ってみた。入湯料は平日550円。ジャクジーあり、壺湯あり、電気湯あり、当然サウナもあり露天風呂もあり、オプションでマッサージも受けられるし、食事も酒盛りも出来る。一つ一つ試してみるだけでも、かなりの時間を食ってしまうという、まさにお風呂のデパート……というには、あまりに庶民的に過ぎるので、スーパーマーケットといったところか。但し、ここの湯は温泉ではない。

 もう10分足を伸ばせば、同じような施設の温泉もある。
 更に20分30分と足を伸ばしていけば、そこら中に温泉施設があるという感じだ。いったいいつの間に? というくらい増えている。しかも、どこも家族連れなどでけっこうな賑わいだ。自宅の風呂にはない開放感や、ちょっとした贅沢気分を求めて来ているのだろうか、家族4人で来て、食事もここで済ませばけっこうな出費になるはずであるが、これをちょっとしたレジャーだと思えば、むしろ安上がりとも言える。

 そうしたレジャー気分を反映してのものなのか、夜の11時を過ぎても、小さな子供たちが施設の中を元気に走り回っていたりする。僕が子供だった頃は、夜9時過ぎは「子供の寝る時間」と教えられ、それ以降の時間帯を起きた状態で過ごすことなどまずあり得なかった。あるとしても、せいぜい大晦日くらいのもので、0時前後の除夜の鐘を聴きながら日付が変わる瞬間に立ち会っていることに、もはや引き返せないほど遠くへ来たような、ドキドキするほどの興奮を覚えたものである。それくらい非日常的なことだったものだが、ここの子供たちは平気で大人の時間帯を生きている。単に宵っ張りの親につき合わされているだけのことにせよ、子供自身もまた、たまの風呂遊びは非日常と映るのかもしれない。


2003年11月05日掲載

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