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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




217 財産への執着(3)

 一旦ヴィデオテープを財産だというふうに考え始めると、その劣化は、株の大暴落のように恐ろしく、二度と挽回不可能なものに思えてくる。ぼやぼやしていると、いつブラックマンデーがやってくるかわからない、その日がやって来ないうちになんとかせねばという強迫観念に襲われるのだ。まさに「持てる者」の悩みそのものに悩まされるようになるのである。

 映画などを録画したものなら、そっくり同じものや、新しいメディアになったものが、いつでもまた手に入るだろう。しかし、録画テープの中には、ここで一旦ダメにしたら、二度と手に入らないかもしれないものもある。一般的には、自分たちの結婚式を録画したものだったり、生まれたばかりの子供の映像だったりするのだろうが、僕の場合、そういうテープは一つも持ってない。いわゆる“我が子の可愛い映像”もあるにはあるのだが、ヴィデオテープより更に再生が困難な8mmフィルムだったりする。

 僕にとって劣化が恐いのは、DVD化されそうもない日活作品「オオカミが出てきた日」とか、TVドラマ化された「ある朝パニック」などの映像作品、「マドモアゼル・モーツァルト」のミュージカル舞台を録画したもの、あるいは僕が脚本を書いた舞台「アデイ」のリハーサル風景を収録したものなど、主に仕事に関係したものである。もちろん、それらにはマスター・テープが存在すると思うが、ダメになったからといって、いちいちダビングを依頼する手間を想像するのも億劫である。もともと、ダメになったら諦める、というスタンスではあるのだ。


2004年03月17日掲載

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