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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




219 悪夢を見る(1)

 久しぶりに、夢を見た。
 いや、夢ならいつでも見ているはずだが、目覚めたときに覚えていないだけなのだろう。しかし、今朝ははっきりと覚えていた。入り口のたたきや下駄箱に脱ぎ置きした自分の靴が、戻ってくると見当たらないという夢である。これまでしょっちゅう見てきた、嫌な夢の定番だ。

 この夢の舞台は、食事処やら芝居小屋やら銭湯など、大勢の人が集まる場所である。大抵古い和式の建物で、板張りの床は黒光りをしている。とはいえ、由緒ある寺のようには立派な作りではない。銭湯などはいかにも安普請の民家で、入り口の建具は何度もペンキを塗り重ねたようなガラス戸である。いわゆる、僕が子供の頃に普通だったスタイルの建物ばかりが登場するのだ。もっとも、あくまで夢に出てくる建物だから、普通といってもそれは外観だけで、平屋なのになぜか二階や三階があったりするような、とても普通とは言い難い不条理な建物ではある。

 そうした建物へ、履き物を脱いで上がる。
 夢の中の自分が床に上がる時には、大量の履き物が下駄箱に収まりきれず、コンクリートのたたきに所狭しと散乱している。この時はあまり深くは考えずに、たたきに脱ぎ置いて建物の奥に進むのだが、自分がいざ帰ろうとすると、履き物の大半が無くなっていて、残った中に自分の靴が見当たらないのである。この時初めて、自分の履いてきた靴が、買ってまだ間もない、比較的値段の高いものだったということが、夢の中で強く意識される。そこで、いくつか残っている新しくて値段の高そうな靴を手にとってみるのだが、所詮残り物というだけの理由があって、サイズが極端に大きかったり、デザインが明らかに違っていたり、片方しかなかったりするのである。

 とにかく、靴がないと家に帰れないから、とりあえず履いて帰ることの出来そうな靴はないかと探すが、どれも履き古されてくたびれきったような片方だけの靴やらサンダルばかりで、どんどん気持ちがブルーになってしまうという、そういう夢である。


2004年04月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部