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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




222 悪夢を見る(4)

「週刊モーニング」(講談社刊)のキャッチコピーは、今もたぶん「読めば元気になる」であるかと思う。同誌に何度か連載させていただいたことのある僕は、それをもじって、自分の作品を「読めば死にたくなる」マンガとコピーしている。

 もちろん冗談である。
 だが、世の中には「読めば死にたくなるような」暗くて憂鬱な作品も必要とされる時があるはずだと僕は思っている。たとえば、自分がひどく落ち込んでいるときに、底抜けに明るい音楽を聴こうという気には、少なくとも僕はならない。その明るさが、自分のすべてを否定しているような気がして、ますます落ち込んでしまうからだ。

 僕ならば、まずは現在の自分の精神状態と同じようなトーンを持った曲を慎重に選ぶ。たとえば不協和音を多く使った弦楽器系の作品とか、映画や小説だと、やや悲観的なトーンに充ちたものとか、要するに、今の自分のネガティヴな精神状態を、別にネガティヴでいいじゃないかと、そのまま受け入れてくれそうな作品だ。
 人は、肯定されることを最大の栄養とする生き物だと僕は思っている。逆に言うと、人は否定されることが最も辛い。ならば、極度に落ち込んでいるときは、自分に同調的なもの、つまり、少なくとも落ち込んでいる自分を否定しないもの、出来れば肯定してくれるものが一番の薬なのだ。その時の薬は、実は毒だったりするのである。まさに、毒には毒をもって制すというではないか。その薬が効いてきたら、徐々に明るく前向きな環境にシフトしていくという、僕はこれまで精神衛生面に於いて、そうした方法を採ってきた。

 もっとも、僕の描く作品が、そういう「毒=薬」の図式に当て嵌まるとは思っていないし、そういう目的をもって描いてるわけではさらさらない。僕は、普通にポジティヴな作品も描いてるし、これからも大いに描きたいと思っているが、主人公を人生の落とし穴に突き落としてカラカラっと笑うような毒のある話を描くのも、たまらなく好きなのである。


2004年04月28日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部