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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




226 カンピュータ養成講座(4)

 そこで僕は、学生たちに毎週毎週いろんな単語やセンテンスによるモチーフを与え、長短自由にストーリーを作ってマンガに描く課題を与えることにした。
 たとえば、単に「占い」「アニバーサリー」「クリスマス」といった単語をモチーフにしたものや、「体から何かが生えてくる」「濡れ衣を着せる/着せられる」のように内容を含んだもの、あるいは「本当のことを言おう」とか「大人になれよ」といった台詞を必ずどこかに使用したストーリー、更には僕が小説新潮に連載している「タイトルだけが同じ『世界・日本文学全集』」の方法論でやってもらったりしている。

 とにかく、一本のマンガを後生大事に一年も二年も掛けて描くことも必要かもしれないが、次々に放たれ飛んでくる矢を、片っ端から振り払うように描いていったほうが、マンガ家をやっていく上でのカンも実力も身に付くと僕は考えた。絵は雑でいい、ペン入れも仕上げも必要ない、とにかく考えること、考え抜くこと、アイディアを生み出すこと、モチーフに喚起されて、個々人のうちに眠っているであろうテーマを揺り起こす、そういうような習慣を身につけてもらいたい、そして他人に教わるのではなくて、自分自身が答えを見つけ出す、それこそがオリジナリティへの扉であり、マンガ家的体質改善への第一歩である。その作業についてこられない者は、そもそもマンガ家になるのは難しいであろうと言い置いて、次々に矢を放ったのである。とにかく、課題を1点でも1ページでも、より多く提出した者ほど評価が高いという、まさに質より量を重視のエクササイズを施した。

 その結果、学生はどう変わったか?

 遅刻が激増し、出席者は三分の二に減り、出席している学生も大半は授業中の思考を停止し、課題を提出する学生の数に至っては、五、六分の一にも満たなくなってしまった。もっとも、マンガ家になること、まして持続することのハードルの高さと確率とを考えれば、これでも篩(ふるい)の目は大甘に細かいわけだが、ここは学校であって、マンガ家を選り分けるための篩をかける場所ではない。

 そういうわけで、学生が退屈しないように、今年また、授業方法を少々手直しする必要があるようだ。ただ、僕の拙いエクササイズを付き合いよくこなしてくれた数少ない学生のうちの何名かは、たぶんそう遠くない将来、マンガ家デビュー出来るに違いないと僕は思っている。


2004年05月26日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部