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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




251 使用上の注意を守りましょう(1)

 昔治療した歯の詰め物が取れてしまった。
 丁度出かけようとしていた矢先の出来事である。もちろん、歯科医を訪ねている時間など無い。人間というのは、口の中のほんの数ミリの詰め物が取れただけで、それまでの自分がどこへ行ったかと思うほど、激しく違和感を感じるものである。いや、僕の場合はそうだ。口の中のほんの一辺数ミリ程度の小さな空洞が気になって、気がつくと舌の先でくちゅくちゅ触っている。いっときとして触らないでいることが出来ないのである。これから車で出かけようというのに、これでは集中力は運転のほうではなくて、ほとんど口の中に向けられてしまう。

 とりあえず応急処置をするしかないと思い、近くのコンビニへ行き、瞬間接着剤を物色した。が、あまり種類がない。値段の一番安い、いつもの見慣れた製品を買って帰宅。早速、取れた詰め物を医療用アルコールで消毒し、口の中の空洞も綿棒で消毒。いざ瞬間接着剤を詰め物のほうの接着面に垂らして塗り、それを指で摘み、口を大きく開け、まさに空洞に填め込もうとしたその瞬間、階下の玄関チャイムが鳴った。今日一緒に出かけるはずの義父たちが到着したのだ。
 つれあいは、実家のほうの安い花屋に、お供え用の花を買いに行っている。しょうがないので、僕が出るしかない。詰め物を無くさないように一旦机の上に置き、階段をどたどた駆け下り、玄関を開け、義父たちを家の中に迎え入れた。


2004年12月01日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部