写真
---> 拡大表示



* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




252 使用上の注意を守りましょう(2)

 この日は、義母が亡くなったのを機に墓を改装したため、先祖の魂を新しい墓石に移すための開眼式に出かける予定である。しかし、折悪しく歯の詰め物が取れ、応急処置を施そうとしたその瞬間、義父たちが玄関チャイムを鳴らした。

「ちょっと立て込んでるんで、上がってゆっくりしててください」
 そう言い放って、僕はとっとと二階へ駆け上がったが、歯の応急処置はすべてまたやり直しである。まず詰め物を医療用アルコールで消毒し、接着面に瞬間接着剤を塗り、その後に、歯の空洞に溜まった水分を綿棒で拭い消毒する。この順番が大事だ。先ほどとは少し違う。玄関チャイムが鳴る前に試みた順番では、詰め物に接着剤を塗っている間、口を開けっ放しにしていることが辛く困難であることを知ったからだ。うっかりすると、唾液が泉のように湧いてきて、空洞を浸してしまう。口を阿呆のように開けている時間は、短ければ短いほど良いのである。

 さて、接着剤を塗った詰め物を空洞に填め込む段だが、手が邪魔をして肝心の箇所が鏡に映らない。つまり、何にも見えないから手探りでやるしかない。しかも、素早く行わないと、空洞が唾液で埋まってしまうし、接着剤も乾いて無効になってしまう。急げ急げであるが、詰め物は小さく、摘む方向がイマイチよくわからない。しょうがないので、えいやっと摘み、空洞めがけて突進してみたら、運悪く方向が逆であった。


2004年12月08日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部