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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




254 使用上の注意を守りましょう(4)

 取れた詰め物は、帰宅後、町の歯科医院に行って正式に填め直してもらったが、治療が始まる前、窓口越しに、歯医者が「ご自分で接着剤を使われましたか?」と訊いてくる。どうやらお説教を食らいそうな予感がして、適当にごまかそうかという誘惑に駆られたが、「出かけなければならない用や旅行が重なり、ほんの間に合わせで……」という言い訳付きで「使いました」と正直に答えると、更に「何という接着剤ですか?」と質問が続く。僕はその製品の名前を答えたが、歯医者は「ああ、やっぱりね」と呟き、叱るでもなく「きれいに磨いときますので」と言い残して、窓口から姿を消した。
 しかし、「ああ、やっぱりね」ということは、歯医者は詰め物に付着した痕跡から、接着剤がその製品であることが分かったということである。そんなことが肉眼でわかるものなのか? あるいは、取れた詰め物を一旦は接着剤でくっつけようとして上手くいかず、結局歯科医に駆け込むような愚か者の使う接着剤が、大抵その製品なのかもしれない。どっちにしても、餅は餅屋、歯は歯医者である。

 その製品に限らず、こうした接着剤には『口の中の接着には使用しないで下さい』という注意書きがあることを、僕はもちろん知っている。その上で使ったわけだが、歯医者は口の中で使用した接着剤の銘柄を知ることで、その毒性の程度を知りたかったのかもしれない。とりあえず僕の体に接着剤に起因するらしい変調はないので、案外大丈夫なもののようだが、もしこの一文を読んだあなたが同じことをして、体に何かまずいことが起こったとしても、僕やメーカーには一切の責任がないので悪しからず。


2004年12月22日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部