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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




262 タダのカラクリ(8)

 約一週間後、代理店から工事人が二人やってきた。
 2時間と掛からず、温水器が無事屋根の上に載り、その温水をコントロールするシステムが家の西側の壁に設置された。
 この日は晴天だったが、設置された時が既に昼近くだったせいか、真冬の午後の光だけでは、さすがに温水器もお湯を作り出すまでには至らない。それでも、普段は手が切れそうに冷たい水が、ぬるく感じるほどには暖まっている。意外に暖まるまでの時間は短そうである。ただし、暖まった水も、ずっと暖まったままではいてくれない。やはり夜になると、せっかく稼いだ温度もかなり失われる。

 翌日、昼過ぎに戸外システムの温度計を覗くと、58度と表示されている。夏場だと、沸騰するくらいになるらしい。この“熱湯”がシステムによって水で薄められ、日常使う43度前後のお湯にして蛇口に送られてくるわけだが、システムに表示される温度はあくまで一番高い部分のそれで、温水器の中にある180リットルの水がすべてその温度とはいかないらしい。さすがに厳寒期だと、お風呂をすべてソーラーのお湯でとまではいかないようだ。実際、つれあいが温水器のお湯を出しっぱなしにしてシャワーを浴びていたのだが、途中で水が冷たくなってきたらしい。だが、この分だと、夏場は間違いなくガス給湯器の世話になることはなかろうと確信する。

 セールスマンにこの温水器を勧めらている際、僕が「でも、大枚はたいて買ったからといって、温水器は車みたいに乗って遊ぶことは出来ないし、何かが劇的に変わるわけでもないからなぁ」と言うと、セールスマンは「確かに温水器には乗って遊べませんが、でもお湯が出ます」と切り返してきた。「お湯なら現状でも出るよ」と更に突っ込むと、「でも、タダのお湯が出ます。その出た瞬間、感激するお客さんは多いです」と言う。

 確かに、タダのお湯が出た瞬間は「おおっ」という感じがあった。夫婦して喜んだ。とはいえ、感動は長続きしない。すぐに日常という雑草に覆われてしまう。あとは、本当に元が取れるかどうかという、気が長くて、いかにも地味な感動を期待する他はない。高いが、そういう買い物である。そうそう、地味ついでに、いま僕らはこうして僅かながらも地球を救うことに貢献しているのだと思うことにしよう。


2005年02月23日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部