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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




275 サン・マロへの旅(1)

 そのサン・マロへの出発の日がやってきた。
 が、その日に先立つこと10日余り前の日曜日、オープンMINIも納車された。
 どっちの話を書くにせよ、美味しいネタである。ことに後者は金も掛かっている。別に、このエッセイを書くためにMINIへ投資したわけではない。当然だ。ここでMINIのことを書いても、元を取れるのはせいぜいタイヤを1,2本分、おそらく4本全部は無理だろう。しつこく水増しして書けば、電動折り畳みキャンバスを30センチ分くらい回収出来るかもしれない。要するに、まるで割が合わぬということだ。道楽でやるならともかく、僕はそういう身分ではない。ただ、到底そうした身分ではないにせよ、可愛らしいオープンカーを日常の足にすることで、世界の感じ方も違ってきたり、書ける世界が拡がるであろうことは容易に想像がつく。つまり、そうした選択の一つ一つには職業意識が働いていることは確かである。その意味では、投資と言えなくもない。

 もっとも、MINIはつれあいが買った車である。ほぼ毎日通勤に使っているため、僕の普段の足は相変わらずGOLFである。だから、僕がMINIをオープンにして乗る時は、決して日常の足としてではなく、未だ“ハレ”としてのそれである。しかも、その“ハレ”を味わう間もなく、サン・マロへ出発する日がやってきた。我が家には二台分の駐車場があるが、オープン・ガレージの上に、道路との間に何の仕切りもなく、盗人に対して実に無防備である。まだ数十kmしか走っていない納車されたばかりの新車、しかもチリレッドという真っ赤っかの非常に目立つ色のオープンカーを、一週間もの長きに渡って留守宅に停めておくことに一抹の不安を感じるのは僕らばかりではあるまい。GOLF Vはシルバーだし、安価なカローラに見えなくもないからまあいいとして、いかにも派手なMINIを留守宅に置き去りにしていくことは、羊を一匹、オオカミの群れの中に繋ぎ止めておくに等しい気がしたのである。そこで、僕らはMINIを買ったディーラーに旅行期間中預かってもらうことにした。ついでに、ここでもMINIの話は一時ガレージにしまうことにする。


2005年06月08日掲載

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