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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




278 サン・マロへの旅(4)

 全日空206便は無事シャルル・ドゴール空港に着いた。
 僕はパリは二度目だが、空港施設が何やらこぢんまりとしていて、前に来た時とは印象がかなり違っている。なぜか全く記憶のない、初めて見る風景である。もっと大きなターミナルだという記憶があったのだが、それもそのはず、ここは古いほうの第一ターミナルなのだそうだ。僕が以前来たときはエール・フランスだったので、新しいほうの第二ターミナルだったのだろう。第一のほうは古いとはいえ、空中を縦横無尽に行き交うエスカレーターなど、ふた昔も前のSF未来都市イラストを思わせる設計で、建設された当時は、さぞや斬新な建物だったのだろうと想像させられる。

「ゲンキデスカッ?」
 と、入国審査官がいきなり妙な音を発した。
 一瞬「な、な、なに?」と、虚をつかれてしまったのだが、直後にそれが「元気ですか?」という日本語であることを理解した。変な日本語もさることながら、フレンドリーな態度を躊躇無く発揮する、日本人にはあまりいないタイプの人間にいきなり出会ったことで、日本ではない国に来たことを強く実感したのであった。

 つれあいと今起こったことを笑いながら出口を出ると、「M.FUKUYAMA」という文字が書かれた白いボードがすぐに目に入った。まさにこのボードを探していたのだから、すぐに目に入ったのは当然といえば当然である。ボードを掲げているのは、黒皮のハンチングに黒皮のコートジャケット、黒の細身のパンツに黒の革靴を履いた、僕よりはるかに長身の、しかしフランスではおそらく平均的な身長であろう男性であった。

 サン・マロへの旅が始まった。


2005年06月29日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部