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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




282 サン・マロへの旅(8)

 フェスティヴァル専用列車TGVは、駅舎の左端のホームから出るらしいが、そこにはまだその前に発車する便がホームを塞いでいた。どうやら僕らはスケジュール表に書いてある時間通りに動いたため、早く到着し過ぎたらしい。オノレさんは、ここでもまた「フランス式ね」と笑った。

 さほど長い時間でもないのだろうが、駅舎を吹き抜ける風が冷たいためか、かなり待たされている気分である。が、やがてフェスティヴァル招待者の受付が始まり、早く到着し過ぎた僕らは真っ先にそれを済ました。ほどなく、先発のTGVがホームを後にし始めた。だが、そこで驚くべきことが起こった。一旦発車したはずのTGVが、ホームの中頃で再び停車したのである。なんと、遅刻して走ってくる乗客を、ドアを開けて待っているのだ。しかも、最後の乗客が乗り込むまで、それほど短い時間ではないのに、である。寸秒を争う日本の新幹線では、およそ考えられないことである。

  「フランス式ですか」

 僕がそういって笑うと、オノレさんが「そう、フランス式」と返した。
 フランス式なのは、TGVの外観がけっこう汚れたままなのもそうなのだろうか、日本の新幹線に比べたら、ずいぶん薄汚れたままである。だが、中へ入ると、そのゆったりした座席構成に、また別のフランス式をまざまざと感じさせられることになる。なにしろ、日本の新幹線と同じくらいの車体に、横列は2座+1座の計3人分しか座席が並んでいないのである。もちろん、前後もゆったりしている。なんという贅沢な空間の使い方であることか。乗り込んだ車両がファーストクラスとはいえである。

 ともあれ、待ちわびた列車の中はさすがに暖かい。
 列車は一路レンヌへ向かった。


2005年07月27日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部