* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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283 サン・マロへの旅(9)

 TGVが発車して間もなく、コーヒーとクロワッサンのサーヴィスが始まった。乗客の中には、TVカメラやマイクを向けられている人もいる。有名な方なのだろう。
 パリからレンヌへ向かうTGVの窓に映る風景は、ひたすら田園のみである。途中、町らしき場所を通るが、一瞬の後にはまた田園風景に戻っている。たまに道路を車が走っているが、人の歩く姿はほとんど見当たらない。動いているのは放牧場の牛馬ばかりだ。数年前、アメリカ・ミシシッピ州のハイウェイをレンタカーで走った時も、行けども行けども田園で、動いているのは牛馬ばかりだったことを思い出す。

 レンヌへ着くと、バスが数台待っていた。
 そこからサン・マロまでは約1時間。新幹線の終着駅だというと、日本では近代ビルが乱立するかなり大きな都市を想像するが、レンヌの町はあっけないほど小さい。バスが走り始めると、町はあっという間に遠ざかり、すぐにTGVの車窓から眺めたのと同じ田園風景に変わる。フランスの町は概してどこもこぢんまりしているようだ。昔、あのジャンヌ・ダルクが処刑されたルーアンという町に行ったことがあるが、そこの市街地も歩いて回れなくはないくらいの広さだった。ちなみに、フランスは国土が日本の約二倍、人口が約半分だという。人口密度にして日本の約1/4、しかも、山の多い日本と違って、フランス国土の多くは平たく有効面積が大きいから、更にその差は開く。風景そのものが、ゆったりしているはずである。

 バスは、更に小さな町サン・マロに到着。
 降りると、高い城壁に囲まれた中世ヨーロッパの町の見事な景観が目の前に広がる。さっそく観光を、といかないところが今回の旅行の特長である。一旦ホテルにチェックインしたら、ひとまずレストランで空腹を満たし、そのあとすぐにサイン会場へ向かう必要がある。そう、このサイン会こそがこの旅行の主要な目的なのである。が、その目的をはっきり知ったのは、実はTGVの車内で目を通したフェスティヴァルのスケジュール表による。それまでは、自分がいったい何をしにサン・マロへ行くのか、曖昧としてよくわからなかったのである。


2005年08月10日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部