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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




287 サン・マロへの旅(13)

 フェスティヴァルでの仕事はサイン会だけに留まらない。
 期間中、数回のトークショーがスケジュールに組み込まれており、いくつかの会場で司会者の質問にゲストの僕が答えるといったことを行った。ゲストは僕の他にご当地のバン・デシネ(BD)作家や小説家や中国系の絵本作家、国営ラジオ局の放送作家、ジャパニメーションを輸入している会社の担当者といった人たちとの組み合わせ、あるいは僕一人だけといった場合もあった。質問の多くは、著作についてのことや仕事の仕方といったもので、時間も短く、深く突っ込んだ話にはなかなか至らない。通訳を介す手間や時間のせいもあるかと思うが、通り一遍のことを喋っていると、すぐゴングが鳴ってタイムアウトを告げられてしまう感じなので、毎回喋り足りない印象だけが残った。

 初日のトークショー出演を終えると、オノレさんが、カステルマン社のスタッフが夕食をご一緒にどうぞと言っているがどうするかと尋ねるので、よろこんでと答える。約束の時刻まで少々時間があるので、ブックフェアの会場の中でブラブラと時間を潰したあと、城壁内にある、おそらくサン・マロ市内で一番立派と思われるホテルのレストランに入ると、カステルマン社のスタッフの姿はまだ誰一人としてない。オノレさんがすかさず言う。「う〜〜ん、みんなフランス人だなあ」と。僕たち3人だけ先に予約テーブルの隅っこに座って待っていると、やがてカチさん始め7〜8人ほどの集団が賑やかにやってきて、僕らのいるテーブルを囲んだ。

 サン・マロの夜は長い。
 サン・マロは緯度でいうと宗谷岬の遙か北の北、サハリンの真ん中あたりに位置しているせいか日没が遅く、午後8時を過ぎても昼間のように明るい。日本でいうとまだ夕方4時くらいの雰囲気である。もっとも、ここはサマータイムを採用しているので、実際の時刻は1時間前ということになるが、完璧な夜の闇に包まれるには、午後10時を過ぎるまで待たなくてはならない。その夜の長さ、というより夜の始まりの遅さを楽しむのもフランス流かもしれない。いわゆる大人の時間での夕食を終え、ホテルへ帰り着いたのは、既に午前0時を回っていた。


2005年09月07日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部