* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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289 サン・マロへの旅(15)

「今も映画に出ているけど、昔ほどの人気ではなくて、今はむしろ本を書く人として人気がありますね」とオノレ氏。つまり、彼も今フェスティヴァルの招待作家の一人というわけである。それまでただひたすら受け身的に観るだけだったフランス映画、その遠い遠い世界の人気俳優が同じホテルに泊まっていて、今まさにそこにいるという事実は、人をしてにわかに特権階級的ミーハーに変えてしまう。サインをもらい、ついでに一緒に写真に写ってもらいたい衝動に駆られるが、ここはサイン会の会場ではなく、ホテルの食堂である。場はわきまえないといけない。フェスティヴァルはこれから数日続くのだ。チャンスはいくらでもある。何も焦る必要はない。

 結局、俳優兼小説家のリシャール・ ボーランジェ氏のサインと一緒の写真は、僕がサイン会で冷や汗をかいている間に、つれあいが代行してくれることになった。10メートルくらい先のブースが、彼のサイン会場なのである。ボーランジェ氏とはよくよく縁があるのか、フェスティヴァルが終わってパリに戻った時のタクシー乗り場でも一緒になった。僕らの5〜6人前にいるので、つれあいにボーランジェさんだよと教えてあげると、彼のほうもつれあいのことを覚えていたらしく、舞台俳優が観客に挨拶するときのように、何度も何度も両手を大きく左右に広げ、満面の笑みを送ってくれた。


2005年09月21日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部