* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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291 サン・マロへの旅(17)

 フェスティヴァル三日目はサイン会以外に予定がなく、午後からは成田を出発してから初めてといっていい自由時間だ。せっかくはるばるサン・マロまでやって来たのだから、すぐ近くにある世界遺産のモン・サン・ミッシェルを見逃す手はないだろうということで、サン・マロから出ている直通バスの時間を調べた。だが、本数が少ない上に、まったく時間が合わない。しょうがないので、タクシーを使うことに決め、およそどれくらい費用が掛かるものかオノレさんに尋ねたところ、だったら主催者側にお願いすれば、車を出してもらえるのではないかと言う。だとしたら、願ってもないことだ。早速オノレさんが予約を入れてくれた。

 僕たちをガイドしてくれるドライヴァーは、サン・マロに住む既婚女性。このあと、モン・サン・ミッシェルにあるカフェで聞くことになるのだが、彼女の息子さんは子供の時から空手を習っていて日本に行くのが夢だったらしい。その夢を果たした彼は、だめ押しとでも言おうか、フィアンセまでもを日本から連れ帰ったという。
 いったい日本の男は何をやっているのだ、君たちが「萌え〜〜」などとだらしなく涎を流している間に、本来なら君たちが配偶者にするはずの日本の若くて美しい女性が、次々と外国人の腕の中に落ちているのだぞ…… などという話をしているのではなかった。そうではなくて、意外なほど日本人とフランス人は縁が深いことに感心したのである。

「日本の女性は、世界一モテますからね」と僕が言うと、
「しかし、日本の男は、どこへ行ってもモテないのよね」とつれあいが付け加えた。

 その通りである。

 サン・マロからモン・サン・ミッシェルまでは、高速道路を使えば30〜40分くらいの距離だが、彼女は敢えて遠回りの道を選び、サン・マロで最も可愛いくてメルヘンチックな藁葺きの家やら、歴史の教科書にも載っている東インド会社があったところとか、牡蠣の産地として有名らしい海辺の小さな隣の町を通っては僕たちを楽しませてくれた。

 1時間ほどかけて世界遺産の島に到着。
 宮崎駿監督のアニメ「天空の城ラピュタ」を思わせる、この異様な景観を持つ島についてのうんちくは、実に多くの人が書いているので、半可通の僕がたった今調べてきたような知ったかぶりを書く必要もないだろう。この島の景観の素晴らしさは、到底一言では言い表せそうもない。到着した時間が既に遅かったので、残念ながら修道院や頂上の回廊を見物することは叶わなかったが、島を取り囲む流砂が人や牛馬を呑み込んできた話や、一時は政治犯の牢獄として使われていた事実などを聞きながら過ごしたこの島での時間は、あれこれ想像を馳せるのに事欠かず、思っていた以上に充実したものになった。


2005年10月05日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部