写真
---> 拡大表示



* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




295 サン・マロでの日々(1) 〜サン・マロへの旅 番外編〜

 さて、日本ではちっとも有名ではないマンガ家の僕が、妙なことにあたかも日本を代表するマンガ家のような顔をしてフランスへ行き、著書にサインし、トークショーなどで思いついたことを喋ってきたわけだが、もちろん僕は日本マンガ界を代表しようなどという大それた気持ちは毛頭ない。各トークショーごとに、僕は日本のマンガ家としては、どちらかといえば異端であり、売れっ子でもなければ、あまり一般的なタイプではないことを断ってきた。もっとも、モンマルトルの丘の上で受けた雑誌インタヴューでは、まず先方から「あなたは日本のマンガ家としては、ちょっと変わった位置にいると聞いていますが」と言われたので、その通りと答えた。わざわざ自分の難しいポジションについて説明する手間が省けたが、僕程度のマンガ家の情報がそこまで伝わっていることに少し驚いた。

 いまフランスを始めとするヨーロッパでは、日本のマンガのみならずアジア文化の人気が非常に高いという。特にマンガは英語で言うところのCOOL、つまりカッコイイと思われているようだ。実際、マンガはMANGAとそのままの発音で呼ばれているし、オタクもこういう場所では普通に通じる外来語になっている。そう、日本有数のサブカルチャーは空手や寿司などと同じ国際化の道を辿りつつあるのだ。

 サイン会会場で期間中ずっと本を売っていたアレックス君というノッポで長髪の若者は、突然ネイティヴの日本人しか使わないような、とてもカジュアルな日本語を発するので、僕らも驚いて日本語を話せるのかと訊くとそういうわけではないらしい。彼はアニメ監督の新海誠氏のファンらしく、いわゆるジャパニメーション・オタクなのだが、日本のアニメを見てオウム返しに覚えたのだという。そういえば、トークショーでたびたびご一緒したフランス国営ラジオ局のオリヴィエさんは、アニメ『みゆき』や『タッチ』の大ファンだったそうで、僕が『みゆき』の主題歌のサビ部分を軽く口ずさむと、「そうそう、その歌」と、実にうれしそうに微笑んだ。

「フランスは昔から多くの優れた思想家・哲学者を生んできたし、アメリカのジャズにしても、日本のマンガにしても、本国以上にきちんと文化やアートとして受け止めてくれているような気がするけど、それはどうしてなんでしょうね?」

 と僕がオノレ氏に質問すると、彼はこう答えた。

「フランス人は、『これ、何? どう理解すればいいの?』というものに興味を持つ。すぐに答がわかってしまうようなことには、あまり興味を持たない」



※「サン・マロへの旅」を最初から読みたい方は →こちら


2005年11月09日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部