* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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296 サン・マロでの日々(2) 〜サン・マロへの旅 番外編〜

 そうした日本のマンガやアニメブームが背景にあり、その日本からやってきたマンガ家ということで、トークショーで必ず発せられる質問の一つが、日本人マンガ家の仕事の仕方に関するものだった。日本人マンガ家の圧倒的な生産量の多さについては、こちらでもやはり働き蜂イメージのある日本特有のものと思われているようだ。僕は彼等の期待通り、日本の“一般的な”マンガ家の壮烈ともいうべき忙しさや、生産量の多さ、そして家内手工業的なプロダクション式の生産方法について語ってきたが、しかし僕自身はそうではないことを付け加えることも忘れなかった。

 ご当地の人気バン・デシネ作家は、ヴィデオのモニターに映る僕の作品を見ながら、まるで映画を見ているようなダイナミックなコマの流れは刺激的だと言ってくれた。だが、日本のマンガ家のような分業方式の大量生産はとても自分には出来ないし、考えられないこととも言った。それは僕にも出来ないと言ったら、彼は少し安心した様子だった。
「どうしてあなたは(日本のマンガ家なのに)量産しないのか」と司会者が訊くので、僕は「そこまで忙しくして他の楽しみを奪われたくないし、それはあなた方フランス人とたぶん同じだ」と答えたら笑い声が上がった。

 他には、日本のマンガには、たとえば点目やらこめかみに付ける四つ角マークなどの感情表現を正しく読解するための様々なローカル・ルールがあること、そして、今たまたま僕というマンガ家がこうして招待されて、自分のマンガを紹介しているが、もしあなた方が日本のマンガのそうしたローカル・ルールを会得するならば、日本には僕のマンガなんかより遙かにMANGA的で面白い作品が山のようにあることも話した。そんなことを口にしながら、このフェスティヴァルに参加している僕というマンガ家は、いわゆる“一般的な”量産型の日本マンガが更に国際普及していく過程の中での橋渡し的なポジションにあるのかもしれないと思った。



※「サン・マロへの旅」を最初から読みたい方は →こちら


2005年11月16日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部