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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




298 サン・マロでの日々(4) 〜サン・マロへの旅 番外編〜

 日本で結婚式に出席すると、大抵つんとすましたようなフランス料理が出たりするが、オノレ氏によれば、あれはフランス料理というよりは王侯貴族が食べる宮廷料理であり、庶民にはほとんど縁のないものらしい。確かにああした日本のホテルのディナーを想定してフランスを旅行すれば、僕ら日本人が普通にフランス料理だと思っているものを口にする機会が滅多にないことを意外に思うかもしれない。

 実際、今回の旅行でも、生牡蠣などを別にすれば、日本のホテル式のそれを食べる機会など一度もなかった。モン・サン・ミッシェルでは、蕎麦と卵のクレープを肴にブルターニュ地方名産のリンゴ酒を飲み、サン・マロでは招待者用の食堂でよくあるヴァイキングを、パリではベルギービールを飲みながら、豚肉ペーストを挟んだサンドイッチと、およそ世に言うグルメとは無縁の、ごくごく庶民的なものばかりで腹を満たしてきた。そして、そう、必ずビールかワインかリンゴ酒を飲む。朝からビールを飲むことに罪悪感を感じる者もいなければ、咎める者もいない。フランスは緩い社会であり、人々も可能な限り緩く生きようとしているように見える。

「オノレさんの奥さんはどう? 緩い?」

 と僕が訊く。
 オノレ氏の奥様は日本人である。オノレ氏が特有の笑みを浮かべながら答えた。

「ぜんぜん」

 そうか、そうなんだ、奥さん、緩くないんだ。僕らは笑い転げた。  つれあいが、パリを経つ日のドゴール空港で言った。

「今度の旅行はオノレさんが一番面白かったね。彼がすべてだった」

 僕も大きく頷いた。



※「サン・マロへの旅」を最初から読みたい方は →こちら


2005年11月30日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部