* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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305 セルマーのアルト・サックス(3)

 僕が買ったアルトは、今や伝説となったアメセルのMark 6 を今に再現したと言われるリファレンスというモデルだ。アメセルとはAmerican Selmerの略で、日本のサックス通はそう呼ぶらしい。本物のMark 6 は今もばりばり現役で、多くのJazzミュージシャンはこの楽器を使用している。ただし、ストラディバリウスとまではいかないが、絶版の希少品であるために、状態の良いものは新品を買うより遙かに高い値段で取引されているようだ。新品では代わり得ない音が出るのだろう。リファレンスは、それほど評価の高かったMark 6 のいわばレプリカともいえるモデルだが、それを僕は有名楽器店のネット通販で買った。決して安いものではない。Selmer製アルトの中では、最も高いほうである。それを見もしないで買うのだから、なんと無茶なことをすると思われるかもしれないが、僕には直接店頭で試奏して楽器の良し悪しを判断できるような耳も腕もないので、通販で買っても同じである。ただ、見もしないで買う分だけ保険を掛けた。つまり、プロ選定品というものにしたのだ。7%弱ほど高くなった。

 高価な商品だろうが、通販で買おうが、注文した品はあっけなく届いた。あっけなく包装を開け、パーツを組み立てて早速吹いてみたら、あっけなく音が出た。10本の指でことごとくキーの穴を塞ぐE♭以下の低音も難なく出た。とにかく、予想していた通りに音が出しやすい。しかも、音色がまろやか且つ力強く、音量も豊かである。これが値段の差というものだろうか。楽器は確かにその値段に比例するところがある。高い楽器は弾きやすい。自分の演奏が急に上達したように感じるものだ。これまで高い楽器に縁のなかった僕が、楽器は値段であるということを実感した瞬間だった。


2006年01月18日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部