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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




308 初恋(2)

 同窓会会場は新宿伊勢丹と靖国通りを挟んだ真向かいにある中華料理店で、僕は一応実行委員という手前、開催30分ほど前に着いた。だが、委員とは名ばかりなので、何をやるわけでもない。会が始まるまでの時間を、顔見知りと話したり、数十年ぶりに会った同級生の高校当時の顔を必死で思い出したりしながら潰していると、エレヴェーターホールに繋がる少し狭くなった廊下の先に、一目で初恋のその人とわかる女性の姿が視界に入った。


 そもそも、僕が彼女に恋をしたのは、小学5年生の時だった。
 その年クラス替えが行われ、たまたま彼女とクラスが一緒になり、その存在を知ることになった。僕たちが生まれた時代は戦後ベビーブームの終わりの頃で、子供の数がやたら多く、一学年だけで4クラス200人以上はいたから、よく知らない同級生もけっこういたのである。しかも、彼女の性格がおとなしめだったためか、クラスが一緒になるまではその影も形も知ることはなかった。だから、初めて目にする、色が白くて頬も唇もピンクの、長い髪をポニーテールで纏めた、やや色の薄い美しい瞳を持つ女の子の存在は僕にとって衝撃であった。しかも、その女の子は田舎臭い方言ではなく、なんと標準語を話すのである。僕は、そこらへんにいる女生徒とはまったく別の種類の生き物がいると感じたのである。淡い恋の始まりだった。

 彼女には、いつも一緒にいる二人の女友達がいて、僕にも同じように二人の悪友がいた。僕の悪友たちは、僕が彼女のことを好きだということを薄々感じていて、僕にアタックするよう意地悪なほどけしかけたが、敢えてそうしなくても、僕の好きだという気持ちは彼女には伝わっているようだった。そして、彼女のほうからも、僕のことを嫌いではないというサインが目には見えないけども確実に届いていた。いつしか三人同士、恋ごっごとでもいうような、幼くて他愛ないおしゃべりに興ずるようになっていた。


2006年02月08日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部