* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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309 初恋(3)

 そうした楽しい楽しい小学校を卒業し、さあ今度はまた彼女と楽しい楽しい中学生活だと思ったら、あろうことか、彼女は親の都合で引っ越してしまった。今思えば、さほど遠くへ引っ越したわけでもないのだが、当時の幼い僕には、もう二度と会うことのない永遠の別れに思えた。事実、引っ越し先がどこかも知らないので、どうやったら彼女に会えるのか見当もつかなかったし、知恵もなかった。

 僕は彼女のいない中学校へ通うことになり、砂を噛むような味気ない生活が始まった。成績が学内で一番になろうと、IQテストで一番だったと告げられようと、学校始まって以来初めてエレキギターを教室でかき鳴らそうと、彼女のいない学園生活は何もかもが虚しかった。僕はつくづく「彼女」無しでは生きられない人間なのだという自覚はこの頃すでに芽生え始めていた。そして、それは今も変わらない。

 だが、人は忘却する生き物である。若いから、環境に適応するのも早い。
 僕は彼女のいない中学の生活にどんどん慣れていき、彼女のことは忘れはしないが、すっかり諦めるまでになっていた。ただ、中学の三年間、ただ一人の女の子も好きになることはなかった。一学年12クラス600人以上の半分が女生徒だというのに、である。
 敢えて学外まで範囲を広げれば、当時映画館で観た「ラスベガス万歳」というプレスリー主演の映画でヒロインを演じたアン・マーグレットの脚にすっかり魅せられ、どうしようもなく熱を上げたことはある。ちなみに、「家族ゲーム」などの映画で知られる森田芳光監督も、この映画のアン・マーグレットにイカレたクチであるらしい。たまたま同世代であるからといって、よりによって九州と北海道という遠く離れたイカ臭い中学生が、「ラスベガス万歳」というブロマイド的三文映画のアン・マーグレットに雁首揃えてイカレなくてもいいじゃないかと思うのは、あまり良い趣味とは言えないかなと自嘲する気分があるからなのだが、それはともかく、学内に僕好みの女生徒が一人もいなかったせいなのか、それとも初恋の彼女への思い(幻想)を引きずり続けたせいなのかは、今もってよくわからない。とにかく、僕の中学時代の色恋に関しては不毛の一言に尽きる。

 それでも1回だけ、ある笑顔の可愛らしい同級生をやや好きになりかけたことがあった。が、あまりにも彼女の頭が悪過ぎるので、それ以上の感情には発展しなかった。その点、初恋の彼女は秀才ではないかもしれないが、頭は良かった。やっぱり、彼女への思いから逃れなかったのかもしれない。


2006年02月15日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部