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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




316 離れを建てる(2)

 僕が今の家を買ったのは2001年10月、今から約4年半前のことである。
 それまでは、この家から直線距離にして300メートルほど離れた二軒長屋の新築アパートに住んでいた。フィットネスクラブでひと汗流し、駅前ショッピングモールの食品売り場で夕飯用の刺身か何かを買って駐車場へ戻ろうとすると、同モールの催し物広場で不動産展をやっている。「展」といっても、地元の不動産会社が定期的に出店しているだけだが、日銭稼ぎでしかない漫画家の自分に家が買えるとは思っていなかったので、いつも素通りしていた。ただ素通りしつつも僕は遠目が効くので、見るつもりがなくてもそれなりのものは見えてしまう。

 この日は気になる物件が目に飛び込んできた。
 それを確かめるべく、僕の足は即座に展示パネルのほうへ向かった。
 何がどう気になったかというと、そう大層なことではなくて、単にガレージ・スペースが横並びに二台分用意された建売住宅だったというに過ぎない。なかなかおしゃれなデザインの外観ではあるが所詮建売住宅であり、それなりの建物でしかないことは容易に想像がつく。だが、その見取図に描かれた並列二台分のガレージ・スペースが僕の心を大きく揺さぶった。最近我が家の周辺では、それが当たり前のように増えてきたが、わずか4、5年前でさえ、始めから二台分のガレージを用意した建売住宅など極めて稀だったからである。

 しかもその物件の所在地を見ると、その時住んでいたアパートと町名はおろか、丁目も同じなら番地だって30番も違わない。歩いても数分くらいの近場である。アパートに住み始めてからはまだ2年と数ヶ月に過ぎないが、この地域の住環境については十分体得していたし、それはそれで満足もしていた。木を植えたり小さな菜園を作るくらいの庭もありそうだし、建物も仕事場兼夫婦二人が寝泊まりするには十分な広さと間取りである。そんなこんなを思いながら、刺身か何かが詰まったレジ袋をぶら下げた状態で物件のパネルを熱心に見ていると、右肩越しから営業マンの声が掛かった。

「いかがです、現地を見に行きませんか?」


2006年04月12日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部