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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




318 離れを建てる(4)

 我が家は、そうした広大な畑地の一部を潰して建てられた住宅のうちの一軒なので、当然ながら周囲は南側の隣家を含む数軒の民家を除いてすべて畑である。引っ越し以来、ほぼ270度のパノラマ展望を誇ってきた。東のバルコニーからは朝日を拝め、西側の窓からは燃えるような夕日を浴び、北側の窓からは近隣の花火を楽しみ、晴れた日の南向きのベランダからはいつでも富士の雄姿を眺めることが出来た。

 だが、季節は巡る。
 我が家の北側の元栗林だった空き地に、軒先をくっつけるように隣家が建ったのである。まずは一番近くで打ち上がる花火が見られなくなってしまった。しかし、それくらいはまだしもである。普段ほとんど窓を開けることのない北側だから、さほど景観に影響があるわけではない。軒先が近すぎて鬱陶しい思いをするのは、我が家の聳え立つ北壁を目と鼻の先にした隣家のほうだろうから。

 それよりも何よりも、我が家の西側に広がる広大なキャベツ畑が、ある日突然柵で囲われ、でかでかと「国有地」と書かれた看板が立ったことに僕は動揺した。つまり、この農地のオーナーもまた他界されたのである。やはり相続税が高すぎたのであろう、物納という形で国に接収されてしまったのだ。引っ越してまだ数年、これほど早い時期に、視界に遮るもののない見晴らしのよいキャベツ畑でなくなることのショックは小さくなかった。

 さて、この国有地がどうなるのか近接住民としては興味津々、戦々恐々の中で見守っていたのだが、とある大手デベロッパーが落札した。そして、その広大なキャベツ畑は、キャベツ一つ一つの大きさに相当するかと思える程の大きさに細分化され、その一つ一つの区画の上に麻雀牌を縦に並べたようなほぼ総二階の家がギッシリ建てられ分譲されることになったのである。


2006年04月26日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部