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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




320 離れを建てる(6)

 西隣のキャベツ畑に大型のクレーンやら何やらが乗り込んできて、分譲地の造成が始まった。と同時に小さなプレハブ小屋も建ち、不動産屋の営業所も設けられた。全部で32区画、あと数ヶ月もすれば、あの広大だったキャベツ畑は、建売住宅の群れでギッシリ埋め尽くされるのである。そして、我が家の西側のフェンスから僅か60〜70cmほど隔てた先にも、総二階の壁が二軒分そびえ立つことになるのだ。いずれはこうなる日がやって来ることは覚悟していたつもりだったが、こう早くその日がやってくるとは想定外であり、我が家のただでさえ日当たりの良いとは言えない小さな庭が、分譲住宅の高い外壁に囲まれ、いよいよ暗い谷間になってしまうのかと思うとやっぱりゲンナリしてしまった。

 もっとも、その鬱陶しさから免れる方法がないわけではない。
 隣接するその土地を、僕たちが買えばいいのである。

 つれあいも休みで家にいた日の午後、造成の進む隣地をウッドデッキから眺めながら、僕はふと隣の分譲地がいくらくらいで売り出されるものなのか無性に気になり始めた。分譲価格を知ってどうなるものでもないが、気になるものは気になる。僕は庭の壊れかけたサンダルを履いたその足で、プレハブ営業所に向かった。ネクタイスーツ姿の営業マンが一人外にいたので、「ここ、土地だけ買うってこと出来ないんですか?」と僕が尋ねると、営業マンは「出来ますよ」と答えた。なんだ、買えるのかと思いつつ、更に我が家のすぐ隣の土地を指さして「ちなみに、この区画はいくらくらいするもんなの?」と尋ねると、「土地だけだと、○○○○万円くらいですね」と言う。いや実はすぐそこの家に住んでいる者だがといった話をきっかけに、しばらく営業マンと雑談を交わし帰宅すると、つれあいが「いったいどこに行ってたの?」と訊く。これこれこうこうといきさつを話すと、つれあいがこんなことを言い出した。

「じゃあ、隣の土地は私が買おうか?」


2006年05月17日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部