* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number


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325 離れを建てる(11)

 そう、薪ストーブである。
 まさに、ある種の男にとっての憧れ、いや幻想、いやいや妄想、いやいやいや虚妄ともいうべきアイテムの最右翼であろう。それを置けるスペースなど、今の家のどこにもないが、新しく建てる家にはそれが置けるのだ。一挙に、離れ(=あってもなくてもいい余分な家)を建てる意味が倍増した。

 薪ストーブといえば、贅沢品である。量販店で3〜4万円の安いものも売っているが、少し見栄を張りたかったらやっぱり最低でも十数万円からの輸入品が本命だろう。僕は薪ストーブを買ったことも使用した経験もないので、あくまで見栄や飾りとして買うのならという話である。なにせ男の虚妄アイテムなのだから。
 しかも、薪ストーブは値段が高い上に、エアコンや石油ストーブのようなスイッチ一つでさっと暖かくなるといった実用性はあまりないときている。その上、薪の保管場所も必要だし、生木だと長い時間を掛けて乾燥させなければならない。更に灰の処理や煙突掃除などメンテナンスも大変そうだ。それをメインの暖房機として導入するからにはそれなりの覚悟が必要である。が、その大変さこそが楽しいのだとも言える。年代物の車しかり、古いカメラ、ヴィンテージ系の楽器など、男の虚妄アイテムが醸し出すフェロモンの発生源はすべからくその手間の掛かる大変さにある。

 もっとも、僕はあまり勤勉ではないので大変なのは好きではない。出来れば楽をしたいほうだ。はっきり言って面倒臭がりの怠け者である。MINIコンバーチブルも電動トップでなければ、つれあいに勧めたかどうかわからない。なので、結論を言うと、薪ストーブの導入は断念した。そのかわり、というわけではないが、板の間に囲炉裏を切ることにした。それは、僕のみならず、つれあいも所望していた。手の掛かるレトロな暖房機が二つも揃っては、さすがに我が身が持たぬというわけで、薪ストーブが脱落した。



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年06月21日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部