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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




330 離れを建てる(15)

 ところが、2×4工法はそうではない。
 現場に運び込まれる木材は、何の加工も施していない、素材のままの2×4材と合板だけである。2×6や2×8タイプの木材も少しはあるが、基本はあくまで2×4だ。たとえば、2インチより厚い木材が必要であれば、2×4材を二、三本重ね合わせて、西部劇のガンマンみたいに釘打ち機でバスンバスンと一つにまとめ上げ、ぶっとい柱状のものを作るのである。高度な技術の必要なほぞ組みなどは一切しない。ややほぞの役割に似た2インチや4インチの隙間が必要なときは、のみやドリルで隙間を彫るのではなく、必要な隙間を空けて別の板をやはり釘打ち機でバスンバスンと打ち合わせて凸凹の材を作り上げるのだ。

 壁にしても、壁らしく縦に作っていくのではない。張ったばかりの床の上でパネルを作り、それをヨイショと直角に立てるのである。この風景、どこかで見たことがあるなぁと思っていたら、昔ハリソン・フォードが主演した映画「刑事ジョン・ブック(1985年/米国)」を思い出した。この映画の主人公が一時避難することになったアーミッシュの集落で、家だか教会だかを新しく建てるシーンが出てくるのだが、その時、大勢の男たちがロープを引っ張って建物の壁を直角に立てるカットがある。そうそう、あれそのものではないが、あんなような工法なのである。

 そういうわけで、コンクリート基礎の上に木材が組み込まれ始めて今日で三日目になるが、まだ四方の壁のうち一階部分のやっと半分くらいが立ったくらいで、屋根が付くまでにはもう数日掛かりそうだ。たった一日で家の形を見せてしまう在来工法と違って、2×4工法の途中の景観を見ても、それがどんな形の家になるのか、関係者以外にはまったくわからないのである。

 それにしても、この工法はいかにも乱暴だし大雑把だし、匠(たくみ)の持つ繊細な美意識からは程遠いのではあるが、しかし極めて合理的でもある。まさにアメリカンそのもの。今やこの国はアメリカの影響の及ばぬ部分を探すほうが難しいほどだが、二階の窓から作業を眺めながら、僕は大いなる異文化を感じるのだった。



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年07月26日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部