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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




332 離れを建てる(17)

 上棟式を終え、離れは現在内装工事へと進んでいる。小さな玄関にはドアが取り付けられ、鍵が掛かるようになったので、僕らも業者さんがいるときでないと、工事の進捗状況を自由に見ることが出来なくなってしまった。普段の日だと、僕は仕事の合間に覗けるが、つれあいは工事の休日と自分のそれが重なるため、なかなか中を見ることが出来ない。たとえば非常勤講師の日など、途中食事をして帰宅すればもう夜中に近い。たかだか一週間のうちの一日でしかないので、明日の朝まで待てばいいようなものの、どこまで工事が進んだか気になって仕方がない。そこで、真っ暗い中をまるで覗き魔が風呂場でも覗くように、中を懐中電灯で照らしているといった怪しげな状況ではある。

 だったら、施主用にドアの鍵を貰えばいいようなものだが、今使われているドアの鍵は、業者が工事期間中だけ使う臨時のものであり、家の完成後に施主に渡される鍵とは別物らしい。その別物の鍵を一度でも挿して使うと、それまで業者が使っていた鍵ではもう二度と開くことが出来なくなるという。施主に渡された鍵には、合鍵がこの世に存在しないことを保証するメカニズムであるが、なるほど良くできている。

 ところが、ある家の新築工事のとき、まだ工事が少々残っている段階で、施主が鍵を渡され、帰るときについうっかりその鍵で戸締まりをしてしまったことがあるという。翌日、工事に来た業者の鍵ではドアは開けようもなく、“現場”に入れない。施主は鍵と共に遠くに住んでいる。さあ困ったどうしようとすったもんだ大騒ぎした挙げ句、結局施主にドアを開けてもらって一件落着という話を上棟式の宴で聞いた。工事用の鍵と引き渡し用のそれとが別物というのは、よく考えられた完璧なセキュリティ・システムだなと感心したが、所詮人のやることだから、こういう落とし穴もあるのだ。



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年08月16日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部