写真
---> 拡大表示



* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




333 離れを建てる(18)

 つれあいが、以前勤めていた職場の同僚で今も交流のある女友達と久しぶりに会ったとき、この離れ建築の計画を話したのだそうだ。そしたら、その友人は「男の妄想の集大成ね」と一刀両断したという。

 鋭い指摘である。
 その通り、この離れが「男の虚妄」であることは、前にも書いた。つれあいが出資して建てるのに、「男の虚妄」が詰まった家とはこれいかに? ではあるが、しかし、つれあいは僕へのプレゼントと公言して憚らないからそれでいいのである。僕は、つれあいの気持ちに応えるべく(?)、予算の許す範囲で「男の虚妄」を極限まで突き進もうと考えるのだ。

 その一つが囲炉裏であり、工作部屋としてのコンクリートの土間である。そして、ヒノキの露天風呂……といきたかったのだが、こればかりはメンテナンスも含め、予算を大幅にオーヴァーするのは間違いない。温泉旅館でもないのに、そこまで手間の掛かるような風呂を作ってしまったら、いったいいつ仕事をするのかということにもなりかねない。なので、風呂は普通にモダンな樹脂系のシステムバスを採用し、そのかわり風呂より遙かに小物ではあるが、洗面所に陶器の洗面ボールを置くことにした。

 せっかくの虚妄の家なのに、よくあるモダン建売住宅を象徴するような白いシステム洗面セットでは風情がなさ過ぎる。使い勝手には優れていることは間違いないが、いかにも機能性ばかりが目立ち過ぎて味気ない。これに変わる洗面器具はないかとインターネットを探したら、信楽焼の洗面ボールが見つかった。更に追究すると、メキシコ産のカラフルなものも売っている。近くの大型ホームセンターに行っても、信楽焼の同じようなそれがあった。なるほど、こういう世界もあったかと目から鱗が落ちるには落ちたのだが、人間の欲にはきりがない。いざ注文しようとすると、何かが足りない。妙に野暮ったいのだ。どれもいまいちな感じがして、僕の琴線に触れてこない。色やら質感などの何かが物足りなくて、この一つというふうに決めかねるのである。



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年08月23日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部