写真
---> 拡大表示



* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




336 離れを建てる(21)

 そこら5年の間に、夫婦それぞれ新築の家を一軒ずつ持つなどということは、想像も出来なかったことである。僕が普段住む家を買ったのだから、つれあいが別荘を買うというのなら話は俄然わかりやすい。だが、我々のそれぞれの家は隣り合っているのである。家と家の間は僅か1.5メートルも離れていないのだ。いま建てているほうを一応「離れ」と称しているが、どちらにも普通に台所や風呂やトイレがあり、部屋こそ一つしかないが、コンクリートの土間を潰してきちんと床を張り、普通に部屋らしくすれば、家族だって住めなくもないのである。よく考えれば、いや、あまり深く考えなくとも、反射的に何故そんな無駄なことをするのかと、この連載の読者は疑問に思われるに違いない。当の自分たちだって、時々バカげたことをしているんじゃなかろうかと疑問を感じる時もあるくらいなのだから。考えてもみよ、夫婦二人にキッチンとシステムバスがそれぞれ2セット、トイレに至っては3個もあるのだ。この話を始めるとき、どうして隣地を買い、離れを建てるに至ったか、その理由は書いてきたつもりではあるが、よくよく考えれば、わかったようでわからない話なのである。

 僕はもともとは別荘が欲しいと考えていた。
 海の近くでもいいし山のほうでもいい、広々とした見晴らしのいい土地に小さな別荘を持つことは僕の昔からの夢だった。普段はアパートに住んでいても、別荘のほうは借りるのではなく、好きに改造できるように自分所有のものにしたいと思っていた。たとえば、自分で絵付けをして友人の陶芸家に焼いてもらった洗面ボールを取り付けることなど、普通の賃貸アパートではやりたくても出来ないことの一つである。そういうことが自由に出来る家が欲しかった。土地代がべらぼうに高い東京に家を建てることは諦め、山間の別荘なら安く手に入るだろうからと、アパートに住みながら、その可能性をずっと夢見てきたわけだ。

 だが、別荘には一つだけ問題がある。
 その問題に行き当たるせいで、僕は別荘を持つことを躊躇ってきた。
 その問題とは・・・・・・



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年09月13日掲載

<--Back     Next-->



Copyright :
マカロニ・アンモナイト編集部