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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




342 離れを建てる(27)

 とはいっても、結局は据え置き型の電気ノコを買い込んだり、いずれは小さな陶芸用の電気釜を置いたり粘土を捏ねたりすることになるのだろう。料理すると汚れるからイヤだと言って、台所を使うより何も食べないでいるほうを選んでしまうつれあいも、土間に関しては汚してもいいと言う。そのために建てた離れ(アトリエ)なのだからと。

 そう、この離れはオーナーこそつれあいだが、そのコンセプトのほとんどが僕の妄想を形にしていったものだということは前にも書いた。土間や囲炉裏を始め、小さな床の間(「なんちゃって床の間」と僕らは呼んでいる)を作ったのも僕の妄想だし、予算の都合で一部合成樹脂のクロス張りを予定した箇所をすべて珪藻土の塗り壁に変更したのも僕の妄想、床に照明器具を埋め込み下から光を照らすことを発案したことで予算をまたアップさせてしまったのも僕の妄想によるものだ。その中で、つれあいがこれだけは私の希望と言って実現するものがある。一つはホームシアターであり、もう一つは庭に面した濡れ縁だ。

 というわけで、離れには予算の許す範囲でなるべく大きなスクリーンとプロジェクタを取り付ける予定でいる。5.1ch用スピーカーの配線も壁の中に埋め込んで貰った。秋の夜長を映画でも観て過ごそうという算段だが、実際はあれこれと忙しいので、どれくらい観る機会があるのかはわからない。宝の持ち腐れになることだって十分予想される。ただ、映画館ではおそらくもう二度と観ることの出来ない映画を、映画館に匹敵する迫力あるサイズで個人が楽しめる時代になったのである。離れという、無駄だらけの空間をミクロな映画館として生かさない手はないだろう。それが贅沢というものだ。離れは別荘である。別荘をみみっちく稼働率で考えるようでは、最初から持たないほうがよい。

 そして、最後に濡れ縁。

 いま流行りのウッドデッキではなくて、濡れ縁というところが実にレトロなのだが、とにかく濡れ縁にぼーっと座っていたいのだとつれあいは言う。冬の日の、子供の時に過ごした縁側のぽかぽかした暖かさが忘れられないのだろう。出来ればその濡れ縁に渋茶と猫が加われば絵として完璧だが、残念ながらつれあいは猫の毛アレルギーなので、猫を脇に添えるわけにはいきそうもない。犬なら大丈夫なので、なんとなれば小さな犬でも飼おうかと思わないではないが、それは離れが完成してから考えることにしよう。



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年10月25日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部