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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




348 離れを建てる 〜short break 佐渡島への旅(6)

 ホテルはよくある温泉ホテルで、懸念した通りインターネットの設備はもとより、willcomの電波も来ておらず、僕は文字通り離れ島の更新不能なブロガーと化してしまうことになった。もっとも、僕が二、三日ブログを更新しなくても誰が心配するわけでもないし、ややネット依存症の気味があるとはいえ、僕も別にこれくらいの情報過疎状態に耐えられないほどビョーキでもない。もちろん、禁断症状が出て暴れまくることもない。雑誌「Mac People」に連載中の「雑記ンとっしゅ」というマンガにも、この情報過疎地に於ける禁断症状をネタに描いているが、あれは当然ながらマンガ的誇張というヤツである。ネットに繋がらないのなら、とっとと諦め、温泉にゆっくり入って旨いものを心ゆくまで味わうまでのことだ。
 そう割り切って、つれあいのほうの女湯に突っ込むわけにはいかない義父を連れ、この僕がにわか介護士となって一緒に温泉に入り、背中を流し、浴衣を着させたら、お待ちかねの晩餐となった。

 義父はよれよれの老人なのに大食漢である。寿司だったら、二人前などいとも容易く平らげる。ひとりっ子の上に勉強が出来たせいで、ちやほやしてくれる大人ばかりに囲まれて育ったらしく、目の前に置かれた食べ物は、全部自分のために出されたものだと何の疑いもなく思い込むお坊ちゃまな習性がある。寿司などを一つ盛りで注文すると、こちらの領分まで平気で箸が伸びてくるので、僕らは板をきっちり分けて注文することにしている。義父に二人前+α、つれあいと僕とで二人前というふうに。とにかく、義父には他人とシェアするとか、「これ、美味しいよ」と言って周囲に勧めるといった習慣がまったくない。「これ、旨い」とか言いながら、みんなの分までとっとと平らげてしまい、それに気付いた家族を唖然とさせる。あるいは、「これ、美味しくない」などと言って、そういう時だけ「食べていいよ」と人に勧める、というか放り出す。

 そう、もうおわかりの通り、要するに義父は自分本位のわがままクソオヤジなのである。



※「離れを建てる 〜short break 佐渡島への旅〜」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年12月13日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部