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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




350 離れを建てる 〜short break 佐渡島への旅(8)

 佐渡旅行らしいことを少し書こう。
 小木港で船を下り、島を走り始めて初めて気がつくのが信号機がほとんどないことだというのは前に書いた。次に感じるのが、家並みの美しさだ。都会では珍しくなった昔懐かしい板壁の家がずらりと軒を連ねている。今調べたら、その板壁は「押し縁下見張」というものらしい。そして、どの屋根にも、これまた東京ではほとんど見かけないような艶のある黒々とした瓦が載っている。あとで行くことになる小木港からすぐの宿根木という集落で、そこに住むおじさんが「能登瓦だよ」と教えてくれた。1200℃の高温で焼いた吸水率の低い瓦だそうで、それがほとんどの家に載っている。そして、どれも真新しく見える。艶があるせいかとも思ったが、それにしてもやっぱり新しい。

「それは台風のせいだ」

 宿根木のおじさんは観光客の相手をするのが楽しいらしく、自ら僕らに近寄り、ガイドとなってこう説明を切り出した。数年前だったかもっと前だったか、台風が佐渡に大きな被害をもたらした年がある。屋根が飛ばされたり、漏水した家屋が続出したのだろう、ある家が能登瓦を葺いたところ、他の家も余程気に入ったらしく、お金のある家から次々に能登瓦に葺き替えていって現在のようになったというのだ。それまではコンクリートの瓦、あるいはトタン屋根で、更にその前は、いわゆる時代劇映画に見るような板の屋根に石を並べ置いたものだったという。石を並べ置くのは、屋根板が風で飛ばないようにするためだ。そうした屋根が宿根木の集落には一部昔のままに残っている。宿根木は船大工の集落だったそうで、家屋にもその技術が一部使われていたりする。現在は船もグラスファイバー製に取って代わったため、船大工そのものの需要が激減し、集落を離れた人も多いのだとか。原日本の風景を彷彿とさせる集落で、今回観光した中では最も強く印象に残る場所であった。

 ところで、佐渡へ渡ってみて、『1200万人を超える対東京人口比率からすると、やけに佐渡人に出会い過ぎる気がしていた』ことの答は見つかったか? そう、月並みではあるが、やはり道路に車が少なく、信号機にほとんど出会わない、ということが答になるだろうか。それでも、同じ350号線を両津港へ向かうときには、軽い渋滞に遭ってしまったが。



※「離れを建てる 〜short break 佐渡島への旅〜」を第1回から読みたい方は、こちら


2006年12月27日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部