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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




351 離れを建てる(28)

 佐渡島を旅行している間に離れが完成……しているはずもなく、都市ガスの元栓を開いて使えるようになるまでにはそれから更に三ヶ月を要することになる。三ヶ月といえば、季節が反転するのに十分な月日である。当時は船のデッキでも余裕の半袖でいられたが、今だともう凍えるほどの寒さであろう。

 どうしてこうまで遅れるのか、現場監督の方にその理由を尋ねたことがある。「人手が足りないのか?」と。すると彼は「仕事の粗い大工ならけっこういて、仕事がないかとよく聞かれるんですが、腕の良い大工となると少ないんです」と答えた。確かにこの離れは、所々に大工としての匠の腕を必要とする建物ではある。そのように設計し、注文もした。外壁には火山灰であるシラスを原料とする壁材を、内装の壁や天井の一部にはすべて珪藻土を、床や建具など木の部分は天然素材を原料とするオイルステインによる塗装、敷地を囲う板塀もやはり塗装、と言った具合に、ほとんどすべて昔風に職人さんの手を煩わしたものである。

 シックハウスの原因となるような化学系のものはもちろん、目に見える部分に工場生産による半完成品を使うことは極力避けた。この仕様この凝り様で普通サイズの家を作ったら(コストや工期の面で)恐ろしいことになっていると職人さんが言う。二階と言えなくもないロフトや、部屋と言えなくもない通称「土間」を併せても18坪しかない、居住空間としては実質一部屋だけの小さな家だから、この程度で済んでいるのだと。言われずとも、素人目にもこういう建て方が手間と時間を要することは容易に想像できるのであるが、それにしても、囲炉裏を囲むのに丁度良い季節になるまで工期が延びようとは夢にも思わなかった。ただ、無闇に急かせて雑な細工をされても困るので、苦情を二度ほど言ったあとは忍の一字、ただひたすら待つことにした。その甲斐あってか、美しく丁寧な仕上がりになったと思う。

 さて、そうした工場生産ではない、いかにも手作りの部分の写真をこれから数枚ご覧いただこうと思う。まずはこの写真から。いつぞやの洗面ボールを洗面所に取り付けたものだが、ここに取り付けるべき鏡はまだ入手していない。



※「離れを建てる」を第1回から読みたい方は、こちら


2007年01月10日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部