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* 週刊フォトエッセイ*

週休六日のススメ

  文・写真/福山庸治 --->Back Number 




362 アニメ監督デビュー(8)〜短編オムニバス映画『Genius Party』

 いったい何が起こったのか?

 実は何かが起こったわけでも化学変化が生じたわけでもない。ただ諦めただけである。憑き物が落ちたとも言えるだろう。要するに、自分に出来ないことを出来ないと自覚した瞬間、鉛筆がすらすらと進むようになった。と、ただそれだけのことである。

 つまり、僕はアニメ=絵を動かすことに延々囚われ続けてきたというわけだ。シナリオを書いてはみたが、僕のイメージの中にある「いかにもアニメファンが喜びそうな」絵など一つもなく、舞台になるのは家庭用ヴィテオでも十分撮れてしまう極めて日常的な普通の風景ばかりである。もちろん、メカもロボットもバイオも出てなければ、戦闘シーンも爆発シーンもない。さりとてファンタジックなシーンも皆無である。なぜなら、そういうものは僕には描けないからだ。いや、誰かの影響を受けて、あるいはぎりぎりマネをすれば描けるとは思うが、それを僕がやっても何の意味もない。僕は僕に出来ることをやるしかない。しかし、そうは思っても、やはりアニメというのは動いてナンボ、非日常・超現実的なものほどアニメらしいという強迫観念に強く囚われてしまうのである。そこで鉛筆が止まってしまう。その呪縛から自由になるまで、言い換えればそういうものへの色目を捨てて完全に諦め、素の自分に立ち戻るまでの時間がどうしても必要だったというわけだ。

 一旦、素の自分に戻ることが出来れば、絵コンテであろうと何であろうと、いつも描いているマンガのように僕の方法論やテイストで描けばいいだけのことである。いわば開き直り。そこに至るまでの時間が、迷惑な話ではあるが、僕の場合非常に長いのである。そんなもの、短縮出来ないものかと思うが、そういうことを考えていると、その分更に長く掛かってしまうことになるのだった。


2007年03月28日掲載

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マカロニ・アンモナイト編集部